2022年10月6日(木)

21世紀の安全保障論

2022年3月22日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 ロシアがウクライナに軍事侵略を開始してから早くも1カ月が経過しようとしている。第一次世界大戦さながらの地上戦力による軍事侵攻は、ヨーロッパを一気に冷戦時代に引き戻してしまった。

バイデン政権は、中露との外交における正念場を迎えている(ロイター/アフロ)

 ヨーロッパだけではない。今回のロシアによるウクライナ侵略により、オバマ政権後期から着実に高まっていた米国内での「最大の戦略競争相手は中国」「中国を抑止するためには、インド太平洋地域の同盟国・パートナー国との連携が、米国にとって戦略的な最優先事項」という空気を一夜にして一変した。この1カ月、テレビ・新聞・雑誌、あらゆるメディアはウクライナ情勢を24時間トップニュースで扱い、20年前の湾岸戦争を彷彿とさせる。

大統領演説、議会でも〝戦時の対応〟

 ウクライナ情勢は、3月1日に行われた一般教書演説にも大きな影を落とした。通常、この演説では、大統領が「米国の状況はよい(state of the Union is good)!」という明るい出だしで演説を始めた後、自分の政権がその年に重要視している政策について次々と説明していくのが慣例となっている。が、今年は、バイデン大統領が「今晩、私たちは、民主党員、共和党員、無所属、いえ、それ以上に『アメリカ人』としてここに集っています。自由は必ず、圧政に打ち勝ちます」という出だしで始まり、冒頭の10分以上をウクライナ情勢に対する対応の説明に費やした。この中で、ウクライナ情勢悪化に伴う石油価格高騰への懸念についても触れ、「われわれは大丈夫です(we are going to be okay)」と何度も繰り返すなど、戦時大統領さながらの演説となった。

 さらに、3月16日朝には、ウクライナのゼレンスキー大統領が米議会議員に対してビデオ生中継で演説。約20分の演説の中「皆さんからの更なる支援をお願いしたい」として、ウクライナ上空の飛行禁止区域指定、ロシアに対するさらなる経済制裁の継続、また、ウクライナに対する追加的軍事支援の必要性を、聴衆として集った上下両院議員に直接アピールした。

 演説後には、民主、共和両党の議員が口々に、「米国としてウクライナに提供できる支援はできる限り提供するべきだ」と主張。同大統領の演説への、このような反響に応えるように、バイデン政権は、演説が行われた日の午後には、対空防衛システムその他の武器を含む、総額8000億ドルの軍事支援パッケージを発表した。

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