2024年6月25日(火)

21世紀の安全保障論

2022年3月22日

 ただし、共和党側にとっても、ウクライナ情勢への対応は気を付けなければならない。バイデン政権のウクライナ情勢の対応を批判することは簡単だが、行き過ぎた批判は「安全保障問題を政治利用している」として逆に批判されるリスクを伴う。何より、共和党は、2016年大統領選挙期間中のロシア政府との関係がいまだに捜査の対象になっているトランプ前大統領がいまだに無視できない影響力を持っている。

 しかも、当のトランプ前大統領は、ロシアがウクライナに軍事侵略する前日に、プーチン大統領がウクライナ東部の2つの地域によるウクライナからの「独立」を承認したことを「素晴らしい!天才的だ!」と手放しでほめるツイートを出してすでに大顰蹙をかってしまっている。

 ロシアによる軍事侵略が始まったばかりの頃に、国外退避の支援を申し出たバイデン大統領に対して「交通の便は必要ありません。私が必要なのは弾薬です(I do not need a ride. I need ammunition )」と返して申し出を断り、ウクライナ国内にとどまって戦い続けることを選んだゼレンスキー大統領。彼への支持は、米議会の中では超党派で絶大である。にもかかわらず、3月16日の米議会に対するビデオ演説を、緑のTシャツを着て行ったゼレンスキー大統領に対して「議員に演説するのに、スーツを着ないなんて」とツイートしたのも、ゼレンスキー大統領を「凶悪犯(a thug)」と呼び、ロシア側に同情的な発言をしたのも、トランプ前大統領支持派の共和党の新人下院議員だった。つまり、ウクライナ情勢は共和党にとっても、政治的には「両刃の剣」なのである。

日本の安全保障の戦略環境の変化は不可避

 ただ一つ確実なのは、ウクライナ情勢がどのように収束するかにかかわらず、バイデン政権が当初掲げていた「インド太平洋地域最重視」が軌道修正を迫られるのは必至だ。奇しくも、日本の安全保障政策にとっても、今年は、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の3文書が見直される節目の年に当たる。

 「核シェアリング」や「敵地攻撃能力」などの単語が一人歩きすることは避けるべきである。また、米国だけではなく、欧州諸国との緊密なコミュニケーションを維持しながら日本としての対応を考えていく中で、ウクライナ情勢が日本の戦略環境に与え得る影響について十分に検討し、その結果を、これら重要文書に反映させていく必要があるだろう。

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