2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2022年3月26日

米国の分断を煽る行動にも

 ドゥーギン氏の〝プレイブック〟については、20年5月、ワシントンの軍事・安全保障問題研究所「The Strategy Bridge」機関誌でも、詳しく論じられているが、その中でとくに注目されるのが、米国関連だ。

 それによると、ドゥーギン氏は、米国で社会分断を煽ることがロシア国益に合致するとして、時として平和主義運動、組織への支援の重要性を、ネットメディアなどを通じアピールしてきた。そして実際に、ロシア情報機関が20年米大統領選の民主党予備選において、急進左派の論客として一時脚光を浴びたバーニー・サンダース候補を政治資金面などで支援したことが、ニューヨーク・タイムズ紙でも報じられた。

 その一方で、ドゥーギン氏は、16年大統領選では、孤立主義的極右組織に理解を示してきたトランプ候補を熱烈に支持する一方、プーチン大統領の直接指示を受けたロシア各情報機関がヒラリー・クリントン民主党候補追い落としのための対米工作に乗り出したことが、米側各情報機関の合同調査により最終的に確認されている。

 これらの事実は、目的達成のためには非合法活動をもいとわないドゥーギン氏の危険思想が、いかにクレムリンの対外政策に反映されてきたかを暗示するものだ。

言語道断な日本への「ジュニア・パートナー」扱い

 わが国にとって気がかりなのが、日露関係だ。

 ドゥーギン氏は、中国について「習近平が打ち出した『一帯一路』構想はわが国のユーラシア戦略と競合する」として敵視する一方、日本との関係緊密化を支持してきた。

 しかし、プーチン大統領は、今回のウクライナ侵略に関連して、日本が米欧諸国と結束した上で対露経済制裁に乗り出したことに反発、日露平和条約締結交渉の一方的中断を発表したばかりだ。

 果たして、今後の両国関係は、ドゥーギン氏の意に反し、冷却化への道をたどり始めるのかどうか……。先は不透明極まりない状況となっている。

 それにしても、波乱含みのプーチン外交戦略に影響を与えてきたとされる危険思想家のドゥーギン氏が、日本を「ジュニア・パートナー」扱いしてきたことは、言語道断以外のなにものでもない。ましてや、プーチン大統領の対日観もその延長線上にあるとしたら……。日本が期待を寄せてきた北方領土返還も、「偉大なるロシア復活と領土拡大」をスローガンに掲げてきたドゥーギン氏にとっては、まったく論外であり、日本側の単なる片想いということになる。

 
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