2024年12月12日(木)

プーチンのロシア

2022年9月26日

 ロシアのプーチン政権が9月21日に発令した予備役30万人を対象にした動員令が、同国社会に激しい混乱と分断を引き起こしている。隣国との国境では、脱出を図るロシア人の車が列をなし、人々はインターネット上で、夫や子供が動員を免れる方法を必死に探している。

ロシア国内では、部分動員令への抗議活動が繰り広げられている(AP/アフロ)

 召集令状は、政府の方針とは異なり、軍務経験がまったくない人々や病人、さらには死亡者にも送られている実態が明らかになるなど、政権がなりふり構わず兵力をかき集めようとしている現状が浮き彫りになっている。これまで政権を支持してきた高齢者層も、考えを変える人が出始めたと指摘する声もあり、プーチン政権への怒りがいずれ、〝沸点〟に達する可能性もある。

「隠れるか、投獄されるか、戦地に送られるか」

 「老人が行くのか? 子供が行くのか? 女が行くのか? 俺たちが行くしかないんだ」

 動員が発令された2日後の23日朝、ロシア極東ボリショイ・カーメニの入隊事務所に集まった男性の一人は現地メディアに、自分を鼓舞するように語った。「すべてうまくいく、必ず戻ってくる」とも語っていた。女性らは周囲で涙を流していた。

 動員発令直後から、このような光景がロシア全土に広がった。北東部のシベリア・サハ共和国の村では、旧ソ連さながらに、「カチューシャ」の音楽が流されるなか、村の集合場所から男性らが見送られた。首都モスクワでも、招集された若者が、涙を流す母親に笑顔を見せていた。

 しかし、多くのロシア国民らは、〝招集される〟という事実の意味を理解している。

 「殺されて土に埋められるのならば、息子は牢屋に入った方がましだ」

 「これは戦争ではない。ウクライナ人はわれわれを攻撃していない。プーチンの家族を戦地に送るべきだ」

 ロシア南部カフカス地方で行われた軍による徴兵された子供を持つ親族向け説明会で、母親らがそう怒りをあらわにしたという。

 「誰もが、たったひとつの話題を話し合っている。それは、どうやって〝夫を隠すか〟ということよ」

 ロシア南部チュバシ共和国からの報道によれば、地域の女性らは通信アプリ「テレグラム」や「ワッツアップ」を使い、徴兵から逃れる方法をめぐる情報を必死になって交換しあっているという。「他に何ができるというの? 隠れるか、投獄されるか、戦地に送られるかしか、選択肢はないのよ」と、女性のひとりは打ち明けた。


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