2024年12月7日(土)

WEDGE REPORT

2022年9月22日

 「カチンの森事件」にも劣らない残虐非道というべきだろう。

 旧ソ連は第2次世界大戦初頭、多数のポーランドの将兵を捕え、拷問のすえ銃殺、カチンの森に埋めた。

 いま、ロシア軍によるとみられる拷問室がウクライナ各地でみつかり、集団墓地からは市民を含む数百人もの遺体が掘り起こされている。大戦中の冷酷な体質がいまだに受け継がれていることに驚く。

ウクライナハルキウ州イジュームでみつかった集団墓地。子どもら数百人の遺体が見つかっている(ロイター/アフロ)

 各国が糾弾の声をあげ、戦争犯罪を裁く国際刑事裁判所(ICC)も捜査を開始、一部の国からは国際法廷を設置して、ロシアによる侵略行為そのものを裁くべきとの声も出ている。 

 ターゲットは、むろんプーチン大統領だ。世界の期待通り、侵略者を国際法廷に引き出すことができるか。

電気ショックの拷問、壁には祈りの言葉も

 ポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の映画『カティンの森』のなかで、大きく掘られた穴の前に将校が次々と立たされて後頭部を撃たれ、そのまま落ち込んでいくシーンがある。血も凍るような冷酷、残虐さは、ほとんど正視できなかった。

 カチンの森の虐殺は、ソ連が1939年9月、ナチス・ドイツに続いてポーランドに侵入した際、多数の同国将校らを連行、殺害してモスクワ西部、カチンの森に埋めた事件。ソ連は終戦後、敗戦国となったドイツに罪をなすりつけていたが、戦後も半世紀近くたった1990年、ゴルバチョフ政権が、ソ連の犯行を認め、ポーランドに謝罪した。

 ウクライナ東部ハルキウ州の拷問室やイジュームの集団墓地では、同じような〝悪魔の所業〟が繰り返されていたのだろう。


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