2022年10月7日(金)

WEDGE REPORT

2022年9月22日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 各国メディアが報じたところによると、拷問部屋(torture chamber)はハルキウ州内の10カ所で見つかっている。ロシア占領地に作られた名ばかりの〝警察組織〟に市民らが拘束され、地下貯蔵庫、一部は鉄道の駅など10カ所に拷問室が作られた。

 地元スーパーの地下室は、金網、鉄格子で囲まれた薄暗い動物小屋のようにもみえた。汚れた羽毛布団や寝袋、ロシア製無線電話機、ロシア作家の小説も残されていた。「ロシア軍が撤退の過程で置き去りにしていった」(ゼレンスキー大統領)ようだ。

 BBCテレビのインタビューに答えたウクライナ人男性は40日間にわたって拷問を加えられた。無線電話機を電源として、そのワイヤーを握らされ、尋問への返答が気に入らないと、電圧をあげて苦しめていく。拷問の多くは、電気ショックが用いられたという。

 換気装置のスイッチを切って音を消し、拷問による悲鳴が拘束している市民に聞こえるようにするという周到さだった。女性も容赦なく拷問にかけられたといい、ある部屋の壁には祈りの言葉が刻まれていた。

 ハルキウ州イジュームでみつかった集団墓地からは、これまで遺体450体以上が掘り起こされている。兵士だけではなく、子どもを含む市民らも含まれていた。後ろ手にしばられたり、首にロープを巻きつけられたりした遺体も少なくなかった。

 ウクライナの検察当局が解剖など死因の特定を急いでいるが、ロシアが設置した〝警察組織〟の活動、拷問に関する証拠は徐々に収集されている。

 一方、ロシア側はこれら疑惑について全面的に否定。ペスコフ大統領報道官は「ブチャの時と同じシナリオ、すべてウソだ。われわれは真実を守っていく」と反論している。

責任者訴追へ国際連携広がる

 ロシアによる侵略開始以来、3月にキーウ近郊のブチャでやはり数百人の市民らが殺害された事件が明るみに出ていることもあって、フランスのマクロン大統領は、戦争での残虐行為を意味する「atrocity」という極めて強い言葉で非難。

 米国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官は「ロシアによる戦争犯罪であることを明らかにするため、国際的な努力に積極的に協力する」と述べており、責任者処罰に向けての国際的な包囲網が敷かれつつある。

 実際の拷問、虐殺に関与した責任者の訴追、処罰に関しては、「一義的にはウクライナが国内法で裁くだろうが、国際刑事裁判所(ICC)と連携しながら、進められるのではないか」(松田邦紀駐ウクライナ大使)という見方が強い。

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