2022年9月27日(火)

WEDGE REPORT

2022年9月22日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 オランダ・ハーグに本部を置くICCの検察局は、ブチャの虐殺が明らかになった後にカーン主任検事が現地を訪れ証拠収集などを行っており、担当検事がすでにキーウに常駐、ウクライナ側と協議を行っているとの情報もある。今後双方がいずれのケースを担当すべきかなどの分担が検討され、捜査が本格化するとみられる。

プーチン訴追支持も広がる気配

 一方、個々の残虐行為の責任者処罰とは別に、国際的な特別法廷を設置して、ロシアの侵略行為を裁くべきだ――との提案もなされている。

 ウクライナのイェルマク大統領府長官は、9月初め、ハーグで開かれた戦争犯罪に関する会議で国際法廷設置を求めた。9月の欧州連合(EU)議長国チェコのリパフスキー外相も、イジュームの集団墓地が見つかった直後、同様の提案をしている。

 同外相は訴追すべき人物としてプーチン大統領とその盟友、ルカシェンコ・ベラルーシ大統領をあげ、「彼らは戦場で敗れ、法廷で責任を問われることになる」と断罪している。

 しかし、個々の行為ではなく「侵略戦争」を裁き、指導者を訴追することには種々の議論があると予想される。

 第2次世界大戦後の「東京裁判」では、東条英機元首相ら死刑判決を受けた7被告全員が「侵略戦争」の訴因で有罪とされたが、当時と現在では法律論や罪刑法定主義の考え方が大きく異なる。ICCのカーン主任検事は「できないことではないかもしれないが、できることに集中したい」と慎重な姿勢を見せている。

 しかし、欧州議会のメツォラ議長は「特別法廷設置を支持し続ける」、EUのフォンデアライエン欧州委員長も「プーチンはICCで裁かれるべきだ」と、それぞれ述べており、国際的にプーチン訴追を求める声がさらに高まれば風向きが変わり、既存の法的枠組みの中で、訴追実現に向けた動きが広がるかもしれない。

 プーチンも安閑としてはいられない。

 
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 ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
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