2024年4月20日(土)

Wedge OPINION

2022年8月31日

 ロシアの暴挙に何もできない国連。だが国連の制度はこの状況下では機能しない設計となっている。拒否権をどうするべきか、日本はどう振る舞うべきか。ヒントは「国際連盟」の歴史の中にある。
 『Wedge』2022年9月号に掲載されているWEDGE OPINION「国際連盟の教訓踏まえた国連 「機能不全論」の誤解を解く」では、そこに欠かせない視点を提言しております。記事内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
ロシアによる侵攻の中、国連安保理で演説したウクライナのゼレンスキー大統領は、安保理改革を訴えた (SPENCER PLATT/GETTYIMAGES)

 「ロシアを侵略国として安全保障理事会から追放し、戦争をやめさせてください。それが叶わないのであれば、せめて安保理が真に機能するための改革案を示してください。いずれもできないのであれば、あなた方に残された道は解散しかないでしょう」

 4月5日、国連安全保障理事会(安保理)で、ウクライナのゼレンスキー大統領は、安保理に具体的な対応を迫った。2月25日に提出された、ロシア軍撤退を求める安保理決議案は、ロシアの拒否権行使により否決されていた。「国際の平和及び安全を維持する」目的で創られた国連は、ロシアの明白な侵略に対し、道義的な非難を浴びせることで精いっぱいのように見える。

 国連は今何ができるのか。ロシアの侵攻を止めることはできるのか。「実際のところ、なにもできません」と、国連研究の権威である米ニューヨーク市立大学ラルフ・バンチ国際問題研究所名誉所長のトーマス・ウィース氏はごまかすことなく答えた(2022年2月28日付『朝日新聞』)。取りつく島もないが、それが真理に限りなく近い。

 世界各地の武力紛争に対し、国連の機能不全が叫ばれてきた。だが、今回のケースにおいて、機能不全という表現は正確ではない。安保理には、常任理事国(P5)であるロシアに対して、強制行動を含んだ実効的な措置を発動する「機能」が、そもそも備わっていないからである。拒否権とは、国連の強制措置が、いかなる場合にもP5の意に反して行われないことを保障する制度に他ならない。国連の集団安全保障は、P5が紛争当事国となった場合に、有効に「機能」しないようはじめから設計されている。ここに国連の限界がある。

 その欠如した「機能」を新たに付与する安保理改革はできないのか。これが、先のゼレンスキー氏の二番目の要請であろう。


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