ロシアによるウクライナ侵略を巡る国連緊急特別総会では、141カ国がロシア非難決議に賛成し、棄権した国の中にもロシアの行為を認めない発言をした国が多いが、対ロシア制裁に参加している国は40カ国強に過ぎず、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国は、ほとんど参加していない。
その背景には、貿易や武器供与等のロシア依存、ソ連時代からの伝統的な友好関係、自国が関係する紛争について安保理でロシアに借りのある国々、欧米諸国に対する一般的な反発、或いは単に自国と関係のない紛争に巻き込まれたくないとの事なかれ主義など、さまざまな事情がある。
Foreign Policy誌のコラムニスト、ジェイムス・トラウブ7月9日付けの論説‘Cold War 2.0 Is Ushering In Nonalignment 2.0’は、このような途上国がウクライナ問題で西側とロシアの間で中立の立場をとるのは、それ以前の米中覇権争いにおいて、既に醸成されていた超大国の間でいずれかの側に付くような選択を強いられたくないとの主張が結晶化したもので、新たな非同盟運動とも言える、と分析している。
その背景には、西側諸国への批判と自国の利益を守るための実利的、方法論的判断基準があり、伝統的な非同盟運動がイデオロギーに基づいていたこととは異なっている。従って、ウクライナ戦争を民主主義と独裁主義の対立と位置付けるバイデン外交は、これらの途上国の支持を得られず、むしろ亀裂が深まっているのは、北と南の関係であると指摘する。
しかし、非同盟運動は現在でも存在しており、現在はウガンダが議長国で2023年までには首脳会議が開催される予定である。非同盟運動の平和10原則の第1が基本的人権と国連憲章の趣旨と原則の尊重であり、第2が全ての国の主権と領土保全の尊重であるので、ウクライナ戦争での中立的立場とは相いれないはずである。
非同盟運動はこの平和10原則と不可分のはずなので、最近の非同盟諸国の脱イデオロギー的な中立の傾向を第2次非同盟運動と呼ぶことにはやや抵抗感を覚え、むしろ非同盟運動の変質というべきであろう。