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2022年4月8日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 ウクライナ国内で市民の惨殺遺体が多数発見された事件は、ロシアによる組織的、計画的な犯行の疑いが指摘されている。死者はさらに増える見込みで、戦後欧州における最悪のジェノサイド(集団殺害)に発展する可能性がある。

ウクライナでは、ロシアによるものとみられえる市民の惨殺遺体が多数発見されている(ロイター/アフロ)

 ウクライナでの戦争犯罪を捜査している国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)が、今回の虐殺も訴追対象にするとみられる。

 ロシアは関与を否定し、プーチン大統領ら政権トップの訴追は簡単ではないが、ボスニア紛争で、旧ユーゴスラビアの大統領が法廷に引きだされたことがあり、〝望み〟がないわけではない。法の裁きを逃れたとしても、クーデターや暗殺を呼びかける動き少なくなく、プーチンの末路はきびしいものになることが予想される。

後ろ手に縛られ口に銃弾

 激しい戦闘が終わったあとに、戦争犯罪の痕跡が残るのは、現代でもしばしばみられる。1990年代の半ば、旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で、8000人以上のイスラム教徒がセルビア人に虐殺された「セレブレニツァの虐殺」がその典型的な例だ。 

 キーウ郊外ブチャで多数の遺体が発見された直後は、混乱のなかでもあり、くわしい状況が不明だった。その後、米ABCテレビの映像が日本でも放映されるなど、西側メディアの報道や人権団体の調査によって、次第に惨状が明らかになってきた。

 ロシア軍が撤退した後の今月2日、ブチャ(キーウの北東37キロメートル)に入ったロイター通信の取材チームによると、市内には硝煙と死臭と交じり合った強い悪臭が漂っていた。市民らしい遺体が散乱、なかには半分だけ土中に埋まったり、買い物途中に命を落としたのか、ショッピングバッグを握りしめている遺体もあった。

 後ろ手に縛られ、口の中に弾丸を撃ち込まれた2人の男性の遺体が放置されていた。 

 AFP通信によると、ほとんどは、コート、ジーンズ、ジョギングパンツ、スニーカーなど普通の市民の服装。遺体のそばにはウクライナのパスポートなどが散乱していた。

 ウクライナ兵士が〝戦利品〟として燃やしたらしいロシア軍装甲車の脇で写真撮影していた光景も見られたという。

性的暴行し、顔を切りつけた20歳兵士

 米・ニューヨークに本部を置く人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は各地で市民から聞き取り調査を行った。

 その報告によると、3月13日、ハルキウ(ハリコフ)の学校に5歳の娘、13歳の妹らを連れて地域の人たちと避難していた31歳の女性が、若いロシア兵士に性的暴行を繰り返し受けた。兵士は自ら「20歳だ」と明かし、女性のノドや顔面をナイフで刺し、切りつけたという。

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