ウクライナに侵略するロシアに対し、各国が科す経済制裁網の〝ほころび〟が鮮明になりつつある。最大の懸念は、ロシアの輸出総額の45%を占める石油分野で、第三国が大量に輸入したロシア産原油を精製し、原産地が分からない形で再輸出する「原油ロンダリング」とも言える行為が疑われている事実だ。欧米の制裁から距離を置く、インドの関与が指摘されている。
ただ、精製されたガソリンなどの一部は欧州が購入している可能性がある。日本もロシア産エネルギーを購入し続ける方針を固辞しており、ロシア経済の屋台骨であるエネルギー分野で、ロシアを封じ込める困難さが改めて浮き彫りになっている。
原油ロンダリング疑惑
「もしインドのロシア産原油の購入が、ロシアの軍事侵攻への支援につながるというのなら、(欧州が)ロシア産天然ガスを買うことは、支援にはならないというのか? 教えてくれないか」。インドのジャイシャンカル外相は、東欧スロバキアで最近行われた経済フォーラムで、インドに疑念を強める欧州の姿勢を痛烈に批判してみせた。
インドによるロシアからの原油輸入量が急増している。ロシアがウクライナに全面攻撃を仕掛けた2月には日量10万バレルだったが、4月は37万、5月には一気に87万バレルにまで急拡大した。
インド側は、ロシア産原油の買い増しが鮮明になっていた当初、「インドによるロシアからの原油輸入はそもそもわずかだ」と主張していた。事実、ロシアの原油輸出に占めるインドの割合は、侵攻前は1%(2020年時点)で、確かに影響は限定的とみられていた。
ただ輸入量は現在、前年比で8倍近いペースで増えており、インドが単に、廉価になったロシア産原油を購入して積み増しているとは考えにくい。一方、ロシア産原油はインドの石油精製・輸出拠点である西部グジャラート州に大量に運び込まれている実態が報道で明らかになっている。インドが輸入したロシア産原油を精製し、「インド産」ガソリンなどとして、欧州など各国に輸出している可能性が否定できない状況になっている。インドはロシアを含む各国から原油を輸入しており、それらが混ぜられて石油製品になってしまえば、その原産地をたどることは事実上不可能なためだ。