欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は、2021年7月14日、気候変動に関する包括案を公表し、全27加盟国が30年までに温暖化ガスを1990年比で55%削減する方針を打ち出した。
加えて、欧州委員会が2021年に出した予測では、脱炭素化を推進するEUのエネルギー構成の変化に伴って、30年の石油の輸入が15年比で著しく削減されることになるとしている。
エネルギーの7割以上を化石燃料に依存するEUにおける急速な再生可能エネルギーの導入は、欧州に燃料輸出を行ってきた中東諸国の政治・経済に大きな影響を与えることは必至と思われる。
そしてEUが脱炭素化を鮮明にする中、もう一つ、国際エネルギー市場に著しい影響を与えたのが、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻であった。
主要7カ国(G7)の首脳は5月8日開催のオンライン会議で、対ロシア追加制裁措置として、ロシア産原油輸入を禁止する方針を表明している。今回、ロシア産原油輸入禁止の議論を主導したのは、こともあろうに原油輸入の4分の1をロシアに依存するEUであった。だが、現時点でこのEUの提案は、ロシア産原油への依存度が高いハンガリーが反対していることもあって、加盟国の合意を得るまでには至っていない。
ただし、EUはロシア産原油の購入を段階的に減らして22年末までに停止し、石油製品についても同年末までに購入を禁止することを加盟国に提案している。ロシア産石油を代替することになる中東産油国からすれば、喜ばしい話だ。