イスラエルのベネット政権が6月20日崩壊した。10月にもこの3年半で5回目の総選挙が実施される見通しだが、刑事被告人ながら復権を虎視眈々と狙っているネタニヤフ前首相が政権奪取に意欲を示し、政治が混迷するのは確実な状況。イランの核脅威が高まっている中での政権交代となり、イスラエルの内憂外患は一段と深まりそうだ。
〝ガラスの連合〟の当然の帰結
元々ベネット連立政権は〝ガラスの連合〟。いつ瓦解しても不思議ではなく、当然の成り行きだった。むしろ発足から1年、「よくここまでもった」というのが一般的な見方だ。というのも、同政権はイスラエル政界を牛耳ってきたネタニヤフ氏を追い落とすため、極右からアラブ人の少数政党まで8党を包含した寄せ集めの連立でしかなかったからだ。
政権崩壊の直接の要因はパレスチナ政策やユダヤ人入植地問題をめぐって保守系の2議員が連立を離脱したからだ。今後は連立政権発足時の合意に基づき、ベネット首相に代わって中道政党出身のラピド外相が暫定首相に就任、選挙管理内閣を率いることになる。総選挙を行うための法案が近く議会で承認されれば、議会解散を受け10月の選挙となる予定。
ネタニヤフ氏は「国民にとって素晴らしいニュースだ」と政権崩壊を歓迎、復権に期待を表明した。最新の世論調査では、同氏が率いる右派リクードが最も支持を受けているが、選挙ではリクード連合が過半数を制する見通しは小さく、またも激しい連立工作と政治取引の応酬となり、政局の混乱は確実だ。
リクードを支持する国民の中には、刑事被告人のネタニヤフ氏が首相になるなら支持を撤回するという向きも多く、先行きは早くも混とんとしている。だが、米バイデン大統領のイスラエルとパレスチナ自治区訪問が7月13日に予定されており、同国にとって極めて重要な時期の政権交代に懸念の声も強い。