水面下の〝影の戦争〟も激化
イランの核開発が進む一方で、イスラエルとの水面下の〝影の戦争〟も激化の一途をたどっているようだ。5月22日、イラン革命防衛隊の精鋭コッズ隊のサヤド・ホダイエ大佐がテヘランの自宅前でバイクに乗った2人組の銃撃を受け、暗殺された。ニューヨーク・タイムズはイスラエル情報当局が米国に対し、暗殺したことを通告したと報じている。
同大佐はコッズ隊の秘密組織「ユニット840」の副司令官。同組織は暗殺や誘拐などイランの対外作戦を担う特殊部隊で、中東やアフリカなどで活動している。大佐は通称〝狩人〟として知られており、葬儀にはコッズ部隊のガアニ司令官も参列、大佐が重要人物だったことを物語っている。
大佐の暗殺に先立ってイスラエルの特殊作戦グループがイランの対外作戦の暗殺者の1人を誘拐し、謎に包まれた「ユニット840」の情報を入手し、指揮命令系統を突き止めた上で大佐に対する作戦を実行した疑いがあるという。イスラエルはイランの核施設の破壊工作や科学者の暗殺など〝影の戦争〟を仕掛けており、大佐の暗殺もその一環だったようだ。この事件の他にも、5、6月にイランの若手科学者2人が相次いでイスラエルに毒殺された疑惑も浮上している。
イスラエルは〝影の戦争〟を実行する一方で、国交を樹立したアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンなどのアラブ諸国と「イランのミサイルやドローンから守る防衛システム」を構築中とされ、イラン封じ込めに躍起だ。こうした中、ペルシャ湾ホルムズ海峡では、イラン革命防衛隊の高速艇が米艦船に急接近する事態も発生しており、バイデン大統領の中東訪問に向け、同湾に緊迫感が漂ってきた。