イスラエルのベネット首相は、現在、アラブ系政党を含む連立政権を率いている。しかし、エルサレムにおける最近の緊張状態に適切な対応を行えず、アラブ系政党が連立を停止するなど、不安定化の様相を呈し始めている。
イスラエルでは異例となる連立政権は、2021年のガザ地区での11日間に及ぶパレスチナ武装勢力との争いなど前ネタニヤフ政権の政治的混乱を受けて発足した。だが今や崩壊しかねない事態となっている。
エルサレムについては、長年にわたり現状維持の取り決めが守られてきた。だがユダヤ教とイスラム教双方の聖地である「神殿の丘」で、ユダヤ人過激派勢力がユダヤ教の祭日「過越(すぎ こし)の祭り」中に、神への供物としてヤギを捧げる古代の慣習を復活させるとの噂が何度も流れるなど、現状変更への恐れも台頭している。
事実、4月中旬からの約2週間、「神殿の丘」の「アルアクサ・モスク」において、パレスチナ人とイスラエル治安部隊の衝突が続いたこともあって、国際社会の懸念は高まっている。
イスラム教徒の宗教的信仰心が高まるラマダン(断食月)とユダヤ教の祝祭が重なった4月15日には、「アルアクサ・モスク」で、パレスチナ住民とイスラエル治安部隊が衝突し150人以上が負傷する事件が発生してしまった。
さらに、その4日後の4月19日、イスラエル軍が、ガザ地区から前日の18日にイスラエル南部向けにロケット弾が発射されたことへの報復として、ガザ地区にあるイスラム組織ハマスの武器工場を空爆したことを発表している。
加えて、4月25日には、隣国レバノンから発射された飛翔体がイスラエルの空き地に落ちたとして、発射場所へ反撃を行ったことをイスラエル軍が明らかにしている。
バイデン米大統領はその4月25日、ベネット首相と電話会談を行い、「アルアクサ・モスク」で起きたイスラエル人とパレスチナ人の衝突について協議している。その後、ベネット首相は声明を発表し、バイデン大統領がイスラエル訪問の招待を受諾し、今後数カ月のうちに訪問する意向を伝えたことを明らかにしている。
まずは、バイデン大統領のこのイスラエル訪問が、どのような成果を生むことになるのか注目したい。
日本企業の様子がおかしい。バブル崩壊以降、失敗しないことが〝経営の最優先課題〟になりつつあるかのようだ。しかし、そうこうしているうちに、かつては、追いつけ追い越せまで迫った米国の姿は遠のき、アジアをはじめとした新興国にも追い抜かれようとしている。今こそ、現状維持は最大の経営リスクと肝に銘じてチャレンジし、常識という殻を破る時だ。