2022年10月6日(木)

教養としての中東情勢

2022年3月8日

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 ウクライナ戦争は中東にも大きな影響を及ぼしてきた。石油価格急騰で産油国は潤い、非産油国は物価上昇で社会不安も懸念されている。注目されるのはペルシャ湾岸産油国のサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が冷遇されてきたバイデン米政権に反旗を翻す動きを見せる一方、核合意再建協議の合意が近いとされていたイランも強硬姿勢に再び転じる態度を示していることだ。

ムハンマド・アブダビ皇太子(左)のイニシアチブにより、UAEとロシアは良好な関係となっている(2019年10月、ロイター/アフロ)

米国の説得無視し、安保理で棄権

 中東専門誌「ミドルイースト・アイ」などによると、ロシア軍のウクライナ侵攻後、欧米の経済制裁を恐れるロシア人富裕層が資金の移動や不動産投資、事業の移転などを求めてUAEのドバイに殺到、空港はロシア人で溢れかえっている。その背景には、経済を優先する同国が外国人に開放的だったことがあるだろう。

 同じ湾岸諸国でありながら、イスラムの戒律が厳しいサウジやイランとは違い、飲酒などのナイトライフも楽しめるためロシア人観光客に人気が高かった。昨年同国を訪れた観光客数でロシア人は第2位だ。元々、UAEとロシアの関係はUAEを牛耳るムハンマド・アブダビ皇太子のイニシアチブで良好。3年前には「戦略的パートナーシップ協定」を締結、ロシアにとって湾岸協力会議(GCC)の中では最大の貿易相手国である。

 とは言え、これまでペルシャ湾の安全保障を担ってきたのは米国であり、UAEもその軍事力に大きく依存、兵器購入を含む対米貿易額は約240億ドルに上る。特にトランプ前政権下では、ムハンマド皇太子がホワイトハウスを訪問するなどトランプ氏一家と親しい関係にあり、米国の友好国と見られてたきた。

 しかしバイデン政権はUAEがサウジとともにイエメン内戦に軍事介入し、深刻な人道危機を起こしていることに不快感を示し、冷ややかな関係に変わった。UAE側には、イエメンの反政府組織フーシ派がこの1月、同国をドローン攻撃したにもかかわらず、「米国が守ってくれなかった」との強い不満がある。

 トランプ前政権はフーシ派をイランから支援を受けるテロ組織に指定したが、バイデン政権はテロ指定を解除、ドローン攻撃された後もUAEの要求を無視して同派をテロ組織として再指定しなかった。このためムハンマド皇太子らUAE側の対米不信が高まった。

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