2024年4月27日(土)

World Energy Watch

2022年10月4日

 日本政府も電気料金抑制策の検討に乗り出すと報道された。家計調査によると1年間で2割以上上昇している電気料金が、今後さらに上昇することが予測されるからだ(図-1)。

 8月の対前年同月比の消費者物価上昇率3%の内訳を図-2が示している。高騰する電気料金は生活と産業に大きな影響を与え、さまざまな物価上昇を引き起こす。対策を講じなければ、抑制策を取る国との産業の国際競争力にも影響が生じる。

 短期的にはエネルギー価格抑制策で対処するとしても、中長期的には価格競争力を維持しつつ過度の化石燃料依存からの脱却を図り、先進国の中でも極めて高い化石燃料依存度を下げることが必要だ。自給率にも脱炭素にも貢献するエネルギーを考える必要があるとすれば選択肢は限られる。

続くドイツへの怒り

 ドイツの計画通りの脱原発決定については、周辺国、欧州委員からエネルギー需給環境を悪化させるとの批判があったが(「それでも脱原発に進むドイツに欧州諸国は怒り心頭」)、ドイツのエネルギー政策への憤りは続いている。

 日本の経団連に相当すると言われるフランス企業運動(MEDEF)のルー・ド・ベジュー会長は、9月27日に開催されたフランス・ガス協会の会議でのスピーチの中でドイツのエネルギー政策を厳しく批判し、次のように述べた。

 「2011年の福島第一原発事故の後、メルケル政権は22年の脱原発を決定した。これにより、再生可能エネルギーに注力する一方、ロシアからの天然ガス輸入を増やす代償を払うことになった。米国の反対がある中、EU内での明確な支持がないままドイツはロシアとノルドストリーム2の建設に合意した。

 パイプラインを視野に入れていたドイツ政府は、液化天然ガス(LNG)受け入れ設備への投資が遅れた。フランスは、大きな電力供給削減が必要でない暖かい冬を期待しているが、エネルギー価格の問題が解決しなければ、倒産の連鎖のリスクがある。ドイツのエネルギー政策が問題の解決を妨害している」

なりふり構わないドイツ

 EUはロシアからの化石燃料輸入削減を続けているが、ロシアはそれよりも早く供給量を削減し欧州諸国を脅す一方、価格を高値で維持している。ロシアからのEU向け天然ガス供給量は大きく減少している。ロシアはドイツに直接天然ガスを送るバルト海のパイプライン・ノルドストリーム1の操業も8月31日に停止した。

 9月26日、ノルドストリーム1と新たに建設されたものの使用開始に至っていなかったノルドストリーム2からのガス漏洩が、スウェーデンとデンマークの排他的経済水域内で確認された。複数個所で同時に漏洩が起こることは考えられず破壊工作とみられているが、パイプライン中の天然ガスの漏洩がまだ続いており、原因究明には至っていない。


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