2023年2月8日(水)

World Energy Watch

2022年11月7日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

原油生産の回復が遅い理由

 コロナ禍により落ち込んだ米国の原油生産は、依然としてコロナ禍前の水準まで回復していない(図-3)。米エネルギー省は、短期見通しの中で、2023年の原油生産量を22年の見通し日量1170万バレルの6%増、日量1240万バレルと予測している。19年の日量1232万バレルをも上回る史上最高の生産量となるとの見通しだ。

 同じエネルギー省の中からは、原油生産量の先行きに関し悲観的なデータも示されている。米国では、原油、天然ガス生産のためドリリングを行い、その後採掘のための準備を行う。採掘準備のためのドリリング済みの油井(採掘済み未仕上げ-DUCと呼ばれる)の数が大きく減少しているのだ。

 エネルギー省が2013年にDUCに関する資料作成を開始して以降最も数が減っている。ピーク時には9000本に近かったが、2022年9月時点では半分以下の4333本になっている(図-4)。

 DUCの数が減少している理由の一つは、インフラ設備の不足だ。テキサス州主体で一部ニューメキシコ州にかかるパーミアン油田は、米国の原油生産量の6割を担うとされる最大油田だが、パイプラインの輸送能力が不足している。

 パーミアン油田では原油生産に伴い天然ガスも生産されるが、天然ガスを輸送するパイプラインの能力が不足しているため生産が頭打ちになっているとされる。テキサス州では天然ガスの焼却処分量に上限値が設定されているので、原油だけ生産することもかなわない。

 さらに、原油生産事業者が将来に対し不安を持っており、投資に踏み切れないのではないかとの指摘もある。

 石油需要の大半を占める輸送用燃料の需要量は、自動車が蓄電池、あるいは水素利用になれば激減する。既に欧州連合(EU)は、2035年から内燃機関自動車の販売禁止を決めた。バイデン政権も電動化のための大きな支援策を打ち出している。

 バイデン政権は2050年温室効果ガスの純排出量ゼロを宣言している。米国が2050年ネットゼロを目指すのであれば、中長期的には原油需要はなくなる。米国の温暖化、エネルギー政策が将来の化石燃料生産量と価格に影響を与えることになる。


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