2023年2月7日(火)

World Energy Watch

2022年11月7日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 ロシアがドイツに直接天然ガスを輸送するノルド・ストリーム1の運用を一旦中止した8月末から9月初旬にかけ、欧州向け天然ガス、石炭価格ともに史上最高値を更新した。その後多少下落したものの、天然ガス、石炭価格共にエネルギー危機前の昨年1月との比較では、約5倍になっている。そのため、電気と都市ガス料金は各国で上昇が続いている。

 今年9月の欧州ユーロ圏19カ国、英国、米国、日本の対前年同月比の消費者物価指数、電気料金、都市ガス料金、ガソリン価格上昇率は図-1の通りだ。ガソリン価格は日本以外では前月から少し下落しているものの、電気料金、都市ガス料金は、多くの国が支援制度を導入しているにもかかわらず、上昇が続いている。

 米国でも、国際市場の影響を受け化石燃料価格が上昇し、電気、都市ガス料金も上昇しているが、米国民が最も不満を持っているのは、ガソリン価格の上昇だ。車の利用が多い米国では、消費者物価構成比におけるガソリンの比率は、4.24%。日本の1.82%の倍以上もある。米国の消費者に与える影響は大きい。

ガソリン価格高騰の衝撃

 米国のレギュラーガソリン価格は、2000年頃まで長い期間全米平均1米ガロン(約3.8リットル)当たり1ドル前後が続いた。1リットル当たりにすると25から30セント、約40円だ。インターステート(州際)と呼ばれる高速道路も有料の箇所はほとんどないので、多くの米国民は旅費を安くあげることができる車を利用する。

 そのガソリン価格は、コロナ禍の最中の2020年春には2ドルを割っていたが、経済活動の回復とともに徐々に上昇を初め、昨年7月には3ドルを超え、さらに上昇を続けた。

 原油価格が高止まりしていた2010年代前半にはガソリン価格が3ドルを超えていたこともあるが、今年3月には史上初めて週平均価格が4ドルを超え、6月には5ドルを超えた(図-2)。製油所が少ないためガソリン価格が米国内で最も高い西海岸カリフォルニア州などでは価格が6ドルを超え、ガソリンへの支出が多い米国民にとっては大きな脅威となった。

 なぜ、世界一の産油国米国でガソリン価格が大きく上昇するのかと、多くの米国人は不満を持った。共和党支持者は、原因をバイデン政権の温暖化・反化石燃料政策に求め、政策により米国内で十分な原油生産が行えないからではないかと疑問を持ち始めた。


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