2024年4月20日(土)

バイデンのアメリカ

2022年11月10日

中国政策はより強硬に推し進められる

 一方、これと対照的なのが、米議会の対中国姿勢だ。

 ジョージ・W・ブッシュ共和党政権下でホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)アジア部長の要職にあったマイケル・グリーン「戦略国際問題研究所」(CSIS)上級顧問は、このほど米国評論誌『Foreign Policy』に、『中間選挙共和党勝利による米国の対中国戦略本格化』と題する注目すべき見解を寄稿、具体的に以下のような点を列挙した:

 「三権分立の下、新議会ではバイデン政権の内外政策にさまざまな波紋を投げかけることは必至だが、こと対中競争面の2大支柱ともいうべき軍事および貿易面に関して言えば、むしろ現政権の戦略をより一層推し進めていくことが予想される。なぜなら、議会は平均的米国民同様に、他のいかなる課題にも増して『中国の挑戦』との対峙という点で立場が一致しているからに他ならない」

 「これには前例がある。たとえば、1994年中間選挙当時、クリントン政権は医療保険制度改革、対日貿易不均衡問題などをめぐり混乱を極めたが、選挙の結果、共和党が下院を制した後は、対日批判姿勢を引っ込め、1996年には、台頭する中国の挑戦を念頭に置いた日米同盟強化・拡大共同宣言を橋本龍太郎政権との間でまとめた経緯がある。これを受けて共和党主導議会も、防衛予算削減方針を撤回させ、着実な予算増への軌道修正に乗り出した。

 2010年中間選挙でも、共和党が上下両院において勝利を収めた結果、オバマ民主党政権は議会に歩み寄り、翌年には経済・貿易面での対中国包囲網づくりを目的とした『環太平洋経済連携協定』(TPP)枠組み合意に調印した」

 「確かに、トランプ政権当時がそうであったように、一時期、共和党の伝統的な『防衛・貿易重視の共和党』路線に対する懐疑論が台頭、対外コミットメント軽視の危険な孤立主義が叫ばれたことは事実である。しかし、同時に、『中国との競争』という点に関して言えば、議会では今や、過去に前例がないほどの超党派的コンセンサスが生まれつつある。

 去る8月、人工知能(AI)のような先端技術競争における中国の市場独占に歯止めをかけるため米国半導体産業活性化目的で500億ドル支出を盛り込んだ『半導体・サイエンス法』を与野党一致で可決、成立させた。同法案は、共和党保守派のトッド・ヤング上院議員と民主党穏健派のチャック・シューマー上院議員が連名で起草したものだった。このように、『中国の脅威』は米議会で〝奇妙な夫婦〟odd coupleを生み出す結果となっている」

 「今後の下院の具体的動向を展望すると、国防予算関係の重要なカギとなる軍事委員会には、レーガン時代の『強いアメリカ』を信奉するマイク・ロジャーズ議員の委員長就任が確実視されており、彼の下で1兆ドル超の国防予算編成も俎上に上っている。外交委員長に就任が予定されるマイケル・マコール議員は、司法省テロ対策部長、下院国土安全保障委員長などを務めた国家安全保障のスペシャリストであり、中国の勢力拡張、威嚇に対抗するための同盟関係強化に力を入れることは確実だ」

 「過去数年のさまざまな米国研究機関・団体による米国世論調査結果も同様に、日本、韓国、豪州など同盟諸国とのより一段の関係強化を支持してきており、また、中国との対抗上、中国製より多少値段が高くても他国製スマートホンの購入を厭わない消費者が増えつつあることも無視できない動きだろう」

 これはつまり、共和党は前トランプ政権時代以来、全体として「米国第一主義」傾向を強め、外交・安全保障面でも慎重姿勢に転じてきたものの、対中国に関してはその後、国民全体のムードを反映し、対決色に傾きつつあることを指摘したものだ。このため、残り2年のバイデン民主党政権下においても、上下両院の共和党は基本的に立場は同じであるばかりか、むしろ、同党本来のタカ派色を強め、より強硬な中国政策の推進を後押ししていくことを暗示したものといえる。


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