民主党候補にはオバマ元大統領夫人の名も
トランプ氏自身はこうした動きなどどこ吹く風だ。中間選挙投票日の夜、大勢判明前にフロリダ州の邸宅で支持者の前に姿を見せ「メディアはわれわれの敗北を期待したが、そうはならない」などと意気軒高なところをみせた。
投票前の11月4日には、アイオワ州で行われた集会で、「米国を再び偉大で栄光ある国にするため、ほとんど間違いなく(出馬表明)する。それは非常に近い時期だ。準備してくれ」と宣言、支持を呼びかけた。
トランプ氏が出馬表明する可能性のある11月15日は、下院委員会が設定した証人喚問の翌日であり、当てつけのようだ。
トランプ大統領のホワイトハウス奪還の野望は達成されるのか。それを阻むとすれば誰がその役割を担うのか。
24年の大統領選に向けて民主、共和両党などが行った人気投票をみると、以前から下馬評にのぼっている顔ぶれがほとんどで、斬新さに欠ける。
11月の民主党調査では、現職バイデン大統領の一番人気に次いで、カマラ・ハリス副大統領、オバマ元大統領のミッシェル夫人、前回も出馬したピート・ブティジェッジ運輸長官、前々回16年にトランプ氏に敗れたヒラリー・クリントン元上院議員らが上位を占める。
バイデン大統領は9日の記者会見で、選挙結果を歓迎、自らの再選出馬を示唆したが、そうなればハリス氏は見送るとみられる。ブッティジェッジ長官は現在40歳という若さ、前回、予備選では善戦したが、本選挙を争うほど支持を集められるか。
ミッシェル夫人は、ファーストレディ時代から待望論がある。オバマ氏同様弁護士、妻であり母であり、献身的な社会活動などで国民的人気が高いが、政治経験はない。
ヒラリー元議員は前々回敗北しており、民主党支持者でもうんざりする人は少なくないだろうが、それでも一定の人気を保っていることには驚く。
トランプ側近からは出馬断念の進言も
一方の共和党。やはり11月に行われた人気投票では、トランプ氏56%で圧倒的。トランプ氏と主張が近いロン・デサンティス・フロリダ州知事、マイク・ペンス前副大統領の名が挙がっている。
デサンティス氏に対してトランプ氏は〝潜在的ライバル〟として警戒、デサンティス氏は、トランプ出馬の場合、自らは見送る可能性がある。
注視すべきはリズ・チェイニー下院議員だ。
共和党でありながら、反トランプの急先鋒、議会襲撃に関する下院調査委員会の副委員長として、前大統領と犯行とのかかわりを追及してきたが、今回の下院選では、地元ワイオミング州の予備選でトランプ氏が支持する候補に敗れた。
予備選で指名される可能性は少ないが、無所属で出馬、反トランプ氏勢力を結集、共和党の票の分散をさせて当選を阻止することが狙いといわれる。すでに民主党の上下両院候補者への支持を明らかにしており、トランプ陣営にとっては油断できない存在になろう。
トランプ氏の側近は、ニューズウィーク誌に対し、「指名される可能性は95%だ」と豪語、共和党の大統領選候補者を決める予備選での勝利に強い自信をのぞかせている。
しかし、今回の中間選挙での共和党の翳(かげ)りがどう響くか。米CNNテレビは9日、トランプ氏が中間選挙の結果に失望、周囲に当たり散らしていると報じた。
英紙ガーディアンは、早い時期にトランプ氏の顧問弁護士が氏に対して「すべての訴追問題を解決させたいなら、出馬取りやめを表明することです」と勧告したと伝えた。
トランプ氏自身、落選によって影響力を失うことを避け、むしろキングメーカーの立場を維持すべきと考えているとも伝えられる。側近は立候補表明を延期する可能性は低いと言明しているが、トランプ氏の決断が揺らぐ可能性も否定できないだろう。