2024年5月15日(水)

World Energy Watch

2022年12月13日

 大手電力会社の22年度の中間決算では、規制料金が逆ザヤになっていることから10社中9社が赤字。22年度の損益に関する見通しを発表している8社全てが赤字の予想になっている。

 日本の発電設備の大半を保有する大手電力が赤字になり必要な投資ができなくなると、将来の電力供給に問題を生じる。どの業種でも適正な利益は必要だが、特にインフラに携わる企業では設備維持と投資のため重要だ。

 規制料金の値上げは、燃料費を賄うため仕方がないとしても、今後の見通しはどうなるのだろうか。値上げ申請の背景にはエネルギー価格の大きな上昇がある。

上昇する発電コスト

 日本の電力供給の約34%は液化天然ガス(LNG)、約31%は石炭を燃料とする火力発電所により供給されている。石油火力を加えると日本の電力供給の約73%は化石燃料を利用する火力発電に依存している(図-2)。燃料費の変動は発電コストに大きな影響を与えるので、燃料費の変動を調整する制度が規制料金には設けられた。

 電源構成比を反映し、発電に必要な燃料費を計算し料金に反映させる。急な変動を避けるため、3カ月間の平均燃料費を計算し、3カ月後の電気料金に反映する制度だ。例えば、今年8月、9月、10月の3カ月間の平均燃料費により計算された調整額が来年1月から適用される。上限額は規制価格が前回決められた際の大手電力ごとの電源構成比の燃料価格に基づき決められている。

 昨年半ばからの欧州発のエネルギー危機は、天然ガスと石炭の価格を大きく上昇させ、日本が輸入する化石燃料価格も影響を受けた。欧州主要国はロシアから輸入している天然ガスの消費量を削減するため、石炭火力の利用再開、発電量増を図っている。

 一方、欧州連合(EU)はロシア産石炭の輸入を8月10日から禁止した。そのため欧州主要国は、日本向けの燃料用一般炭の72%を供給している豪州などから石炭を買い漁る状況になっている。主要先進国が世界の一般炭輸出量の20%を供給しているロシアからの石炭輸入の禁止あるいは削減を図ることにより、需給バランスは崩れ一般炭価格は過去最高まで上昇した。

 ロシア産天然ガスからの脱却を進めているドイツは、工事期間が短い浮体式のLNG輸入設備を導入し、人権問題で非難していたカタールと15カ年の長期LNG購入契約を締結するなど、なりふり構わずLNG購入を進めており、アジア向けのLNG価格も影響を受けている。石炭とLNGに原油を加えた化石燃料の日本着の輸入価格の推移は図-3の通りだ。

 過去2年間の石炭、LNGの値上がり額を、発電コストに換算すると、輸入価格の値上がり分だけで石炭火力とLNG火力の発電コストは、それぞれ1キロワット時(kWh)当たり16、17円上昇している。日本の発電量の構成比を反映させると化石燃料の値上がりだけで2年間で1kWh当たり平均約13円発電コストは上昇していると推測される。


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