聞き手/構成・編集部(大城慶吾、木寅雄斗)
撮影・さとうわたる
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瀧口 最初のテーマは「脳にたまった『ゴミ』が認知症を起こす」です。人間の脳にゴミがたまるとは、初めて聞きました。
富田 脳の中では常に、タンパク質がつくられては壊されてと、代謝が行われています。年を取ってくると、掃除をサボったような状態になってきて、「アミロイドβ」や「タウ」というタンパク質がゴミとなってしまい、脳にたまっていきます。どうもそれが神経細胞を殺してしまい、認知症になってしまうのではないか、ということが分かってきています。
瀧口 若いときは排出する機能が健全に働いているということですか。
富田 老化は恐らく関係していると考えられています。ゴミ掃除に関して注目が集まったのはこの10~20年ぐらいのことで、まだ分かっていないことが多いですが、他には睡眠や運動などが関わっているのではないかとされています。
瀧口 運動・睡眠以外で「脳内環境」を整える方法はないのでしょうか。
富田 今注目されているのはやはり免疫ですね。脳内の免疫システムというのは、実はずっとあまり分かっていませんでしたが、特に認知症の研究から脳内の免疫が重要だということが判明してきました。現在、脳内の免疫の研究、またそれに関連する新しい薬の開発などが進められています。
加藤 ゴミがたまっているというのをどのように発見するのでしょうか。
富田 今、最も確実に診断できるのは陽電子放射断層撮影法(PET)などによる脳画像の視覚化です。ただまだ研究目的のみで、かつ大きい病院でしかできないので、血液検査による診断の研究が非常に盛んに進められています。ここ5年ぐらいの間に実現するかもしれません。多くの研究者が、認知症になる前にそのリスクを診断できるようになることを目指しています。
瀧口 誰もが認知症になることを防げるような世の中が本当に実現する可能性があるということですか。
富田 今はリスクを見積もれるところまで来たので、次はそれを予防・治療できる薬を作る、または予防法を普及させる、という段階です。
新藏 脳では、「これは悪いやつだから排除しよう」という細胞がゴミ掃除をしているわけですよね。これは全身で起きていて、たとえば動脈硬化の場合は余分なものが動脈壁に付いて脳卒中になったりする。これもゴミを処理し切れなくなったからです。脳でも血管系でも全てにおいて、広い意味の免疫が体の健康、つまり「恒常性」を守るのにすごく大事なのだということが最近分かってきています。「ゴミ掃除」の研究はこれから非常に重要になると思っています。
加藤 免疫を高めるというと、「よく寝てよく食べて」ですよね。免疫が大事だというのは社会でも共有されていると思いますが、免疫の研究は今どこまで進んでいるのでしょうか。