田部康喜のTV読本

2013年7月10日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 NHK徳島放送局が制作した「狸な家族」を観た。BSプレミアムが6月26日に全国放送した。四国4県の総合放送で10月4日に再放送される。同局が開局80周年を記念する「徳島発地域ドラマ」である。

 「地域発ドラマ」というジャンルがある。民放の東京キー局や大阪、名古屋の準キー局、NHKの東京、大阪放送局ではない、地域の放送局が制作するドラマである。

 テレビの草創期や1980年代まで、民放ではTBSの「日曜劇場」を中心として、地方局がドラマをつくることはあった。NHKでは1977年から2006年まであった、夜間帯の「銀河テレビ小説」のなかで、地方局制作のドラマがあった。

 その「地域発ドラマ」が復活を遂げつつある。

15年間故郷に帰らず

 「狸な家族」は徳島県三好市の山間部集落が舞台である。俳優の中島新作(渡辺いっけい)は芝居に憧れて上京し、やはり女優志望だった初子(坂井真紀)と結婚、娘が生まれる。役者として芽が出なかったので、家族一緒に実家で農家の母親菊子(富士真奈美)のもとにいったん戻る。しかし、夢をあきらめ切れずに家族を残して再び上京し、父親役の俳優として成功をおさめる。携帯電話やメールでは妻と連絡をとっているが、15年間も故郷に帰っていない。

 有名俳優と家族の交流を描くテレビ番組に、中島は出演が決まる。父親役として人気をさらに高める絶好の機会と考える。

 実家に帰ってみると、そこには、居候という松木正太郎(荒川良々)が、母や妻、娘とまるで家族のように暮らしている。松木役の荒川はいまでは、連続テレビ小説「あまちゃん」の副駅長役で知られる。脚本の宮藤官九郎が初監督した映画「真夜中の弥次さん喜多さん」のなかで、奇妙な霊の役を演じている。「クドカン組」である。

懸命に「父親」になろうとするが……

 ドラマの映像は、主人公の中島がテレビ番組用に自分で撮影するビデオカメラの映像と、実写が組み合わされている。

 ビデオカメラの映像は、家族を捨てたも同然の中島が、懸命になって父親になろうとしている様子を、劇中劇のように描き出す。

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