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不可思議な規制だらけ 戦前からの公職選挙法

Wedge編集部

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ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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治安維持法は廃止でも選挙法はそのまま

 公選法の原型は、1925年に制定された男子普通選挙法までさかのぼる。それまでは納税額によって選挙権が与えられた制限選挙だったが、選挙運動自体は自由だった。選挙権の制限が撤廃され、有権者が一気に4倍にも増加すると、戸別訪問の禁止や文書図画の制限など選挙運動に徹底した統制が加えられた。前出の片木氏はその理由を政治活動の抑制を狙って同時に制定された「治安維持法と根底に流れる思想は同じだろう」と話す。

 その後、30年代の選挙運動の浄化を求めた「選挙粛正運動」に乗じて、選挙運動期間が設定され、規制が強化されていく。やがて反政府候補者を排除した42年の「翼賛選挙」にもつながっていく。

 戦後、悪名高い治安維持法は廃止され、憲法も改正されたのとあわせて選挙法の制限を撤廃する動きもあったが、立法者を選ぶ仕組みを官僚が決めることに政治家が反発。結局、戦前の選挙法の規制をそのまま引き継ぐ形で、50年に公職選挙法が制定された。

 60~70年代には、公選法の戸別訪問禁止は憲法で保障された表現の自由を著しく制限するものとして下級審で相次いで違憲判決も出されたが、結局、最高裁が合憲判断を下し、お墨付きを与えた。政治活動から国民を遠ざける公選法の規制は、戦後も手を加えられずに生き残ってしまった。

過剰規制が現職を有利にさせる

 現在の公選法は戦前から引き継いだときよりも細かな規制が多くある。ポスターのサイズはタテ42センチ×ヨコ30センチ、選挙カーに乗車できるのは4人まで、選挙運動用のマイクとスピーカーは1個までなどだ。

 これらの過剰なまでの規制は、結果的に現職に有利に働いてきた。公選法は、特定の候補者への投票行為を勧める「選挙運動」とそれを除く「政治活動」を理論的に区別。選挙運動には具体的に細かく例示して規制をかけ、公示日以降に限定している。一方、政治活動は規制の対象としていない。

 選挙公示前であれば、政党での演説会を党首などと連名で告知するポスターは政治活動とみなされる。また後援会へ勧誘するための戸別訪問、政党機関誌の号外として配布されるビラも公選法の規制対象外になる。

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