2024年12月26日(木)

WEDGE REPORT

2018年3月23日

 トランプ米大統領は3月22日、国家安全保障問題のマクマスター補佐官を更迭し、超タカ派のジョン・ボルトン元国務次官を後任に任命した。ボルトン氏は北朝鮮に対する先制攻撃論者として知られる超タカ派の論客。5月末の米朝首脳会談を前にトランプ政権の強硬路線の態勢が整った。

(Mark Wilson/Getty Images)

“罠にはまった金正恩”

 トランプ氏はティラーソン国務長官を電撃的に解任する決断を下した後、辞任したケリー国家経済会議委員長の後任として、経済評論家で、保護主義論者のラリー・クドロー氏の起用を決定。さらに、かねてより解任のうわさがあったマクマスター補佐官の更迭を発表し、ネオコンのチャンピオンといわれるボルトン元国務次官を後任に据えた。

 ボルトン氏の就任は4月9日付。トランプ氏が同氏を安全保障政策の要である国家安全保障担当の大統領補佐官に任命したのは米朝首脳会談を前に、米側の布陣を大統領の考えと齟齬のないように固めておこうという腹だろう。国務長官には穏健派のティラーソン氏に代わって、これも強硬派のポンペオ中央情報局(CIA)長官が指名されており、対北シフトは強硬路線に完全に変わった。

 これについて米朝専門家の1人は「金正恩は首脳会談を提案し、自ら“罠”にはまったのではないか。劇的な米朝首脳会談を演出して、米側から体制の保証を引き出し、ミサイル・核とも廃棄しないでおこうと画策した。だが、米側が強硬派一色にシフトしたことで中途半端な譲歩では済まなくなった。追い詰められているのは金正恩だ」と指摘。怖気づいた金正恩労働党委員長が首脳会談をキャンセルする可能性が高まった、という。

 ボルトン次期補佐官の過去の言動を見ると、トランプ氏よりも過激な発言も目立つ。ボルトン氏はブッシュ政権下で国務次官を務め、国連大使に任命されたが、上院で承認を獲得する見通しがなく、2006年に辞任した。同氏は当時のチェイニー副大統領の後押しを受け、過激な発言などでライス国務長官らと対立を繰り返した。

 ボルトン氏は最近、トランプ氏がお気に入りの保守系のフォックスニュースのコメンテーターを務め、北朝鮮、イランへの強硬発言を連発。北朝鮮問題では、北との交渉は時間の無駄と一蹴し「先制攻撃をするか、北朝鮮が核保有する世界を受け入れるか、そのいずれかを選ばなければならない」として、北の核武装を防ぐには先制攻撃しかないとの考えを示していた。

 また同氏はイラン問題についても、核合意の破棄と制裁の強化を主張し、米国の目標をイランの体制転覆に置くべきだと述べ、イラン側から強い反発を招いていた。いずれにせよ、トランプ政権は一段と「力による外交」に傾斜することは必至で、北への武力行使の可能性のレベルも上がったのは間違いない。


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