中東を読み解く

2018年2月22日

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 シリア北西部の攻防が予想もつかない展開を見せてきた。トルコ軍の侵攻で危機に直面していたクルド人勢力がこれまで敵対関係にあったアサド政権と手を組み、拠点の町アフリンに民兵部隊を招き入れたのだ。トルコはこれに砲撃で応じ、内戦がにわかに国家間同士の衝突に発展する懸念が高まっている。

砂漠の風紋のように変化

(rogerashford/iStock)

 内戦終結と過激派組織「イスラム国」(IS)が壊滅した後のシリアの覇権争い「グレートゲーム」が激化していることが一段と鮮明になる中、内戦で敵対関係にあったアサド政権とクルド人勢力が急接近。アサド政権支援の民兵部隊をアフリンに入れることで合意し、2月20日、一部が同町に到着した。

 しかし、これに怒ったトルコ軍が砲撃し、民兵5人が死傷する事態に発展。民兵がアフリンから撤退したとの報道もあるが、情報が錯綜し混乱している。トルコのエルドアン大統領はアサド政権側のアフリン進出について「高いツケを払うことになるだろう」と強く警告。対してシリア国営通信は「アフリンの占領を試みるトルコとテロリストの雇い兵から主権を守る」と反発した。

 アサド政権とクルド人との今回の共闘をどう見ればいいのか。ベイルートの消息筋は「敵対者同士が目先の利益でくっついたということだ。彼らは“敵の敵は味方”という古典的な法則に従っただけだ。一方は全土の奪還という欲が出てきたアサド。もう一方のクルド人は単独でトルコと戦うより仲間がいた方が良いということだろう」と指摘する。

 つまるところ、しょせんは当面の共闘にすぎない。トルコという目の上のたんこぶが消えれば、再び敵対者同士に戻るのは必定。アサド大統領には、クルド人の自治や独立を認めて、領土を割譲する気はさらさらないだろうが、「砂漠の風紋のように変化する離合集散」(同筋)があらためて浮き彫りになった形だ。

 問題はアフリンに入った民兵がイラン指揮下のシーア派民兵だったと思われる点だ。つまり今回の民兵派遣はイランの同意の下で行われたということだ。イランとトルコはロシアが主導するシリア和平会議の有力メンバー。いわばロシア、イラン、トルコの「3国同盟」の仲間だったはずなのになぜ、トルコと敵対する民兵投入に踏み切ったのだろうか。

北部の混乱望まぬイラン

 まず言えるのは、トルコが考えていたほど、イランとの関係が強固なものではなかったのではないか、ということだ。政治と、現実の戦場の力学との乖離もあるだろう。それはロシアとの関係でも同じことが言える。トルコのシリア侵攻に対し、地域の制空権を握るロシアが青信号を与えたのは事実だろうが、ロシアがこれ以上の戦乱拡大を望んでいないこともまた事実だ。

 ロシアの思惑は別にして、とりわけイランはシリア北部での混乱は望んでいない。IS以後のシリアにおけるイランの戦略目標は大きく言って2つ。1つはイランから地中海に至るイラン、イラク、シリア、レバノンという「シーア派三日月地帯」を死守すること。

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