WEDGE REPORT

2018年3月6日

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 トランプ・ホワイトハウスが再び大混乱に陥っている。最近の鉄鋼などへの高関税方針の突然の表明や反対だった銃規制に対する前向きな姿勢は側近や議会、支持者らを慌ててさせ、「何が起きるか誰も分からない」(米紙)という視界不良状態。大統領の暴走を止められない制御不能なスパイラルが極まってきた。 

(Jerca Zagorc/iStock)

「政策上の最大の失敗」

 大統領は元々、80年代に最大の貿易赤字国だった日本を非難する広告を米有力紙に出したことでも知られるように、自由貿易は米国の利益にならないとする保護主義論者だ。しかし、今回の3月1日の発表はいかにも唐突だった。それは、鉄鋼とアルミニウム関連企業の経営者らをホワイトハウスに呼んでの会議を終え、写真撮影の時だった。

 トランプ氏は記者団の質問に答え、鉄鋼とアルミニウムの輸入製品に関税を掛けると述べ、保護貿易政策に踏み切る考えを宣言した。経済担当の側近らが発言の文書を用意する間もなかったほどで、大統領がいかに急きょ決断したものであるかが浮き彫りになった。市場が大混乱を呈しているのは周知の通りだ。

 大統領の経済政策の最高顧問で、ゴールドマン・サックスの経営者だったゲーリー・コーン国家経済会議議長はトランプ氏に関税措置を実施しないよう説得。ケリー首席補佐官に対し、もし大統領が高関税に踏み切れば、辞任するとまで警告していた、という。前日のホワイトハウスの発表では「会議は業界の懸念を聞くため」とされており、高関税の方針は見送られると見られていた。

 なによりもムニューシン財務長官は1月のダボス会議で「貿易戦争に入るつもりはない」と世界に確約してもいた。それにもかかわらず、トランプ氏は今回、ロス商務長官ら交易強硬派の意見を取り入れたことになる。これに対し、トランプ氏の友人ルパート・マードック氏が社主の経済紙ウォールストリート・ジャーナルは「政策上の最大の失敗」と批判した。

 自由貿易の推進を伝統とする共和党主流派も不意打ちを食らわされた格好で、ライアン下院議長は憤慨し、取り乱した様子だったと伝えられている。鉄鋼製品の最大の対米輸出国である隣国カナダや欧州連合(EU)、中国が強く反発、報復措置も辞さない構えだが、トランプ氏は「貿易戦争はいいことだ。楽勝だ」「EUの自動車にも関税を掛ける」などとツイート、貿易戦争への懸念が高まる一方だ。

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