WEDGE REPORT

2018年3月15日

»著者プロフィール

 トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任し、新長官にポンペオ中央情報局(CIA)長官(54)を指名した。ポンペオ氏はイランや北朝鮮に対する強硬路線を主張してきたタカ派として知られるが、5月に予定されているトランプ氏と北朝鮮の金正恩労働党委員長の首脳会談の準備に中心的な役割を担うことになる。ポンペオ氏とはどんな人物なのか。

(Mark Wilson/Getty Images)

トランプ氏を独裁者と批判したことも

 ティラーソン氏が正式に通告を受ける3時間も前に、ツイッターで宣告されるという屈辱的なやり方で大統領からクビを切られたのとは対照的に、大統領のポンペオ氏に対する評価は「当初からウマが合った」と極めて好意的。「真に偉大な国務長官になるだろう」と自分の判断に胸を張った。

 米中西部カンザス州選出の下院議員だったポンペオ氏は2016年の大統領選予備選挙では、若手のマルコ・ルビオ上院議員を応援した。注目されるのは、ポンペオ氏はこの時、トランプ氏に投票することは独裁主義者の大統領に投票することになるなどとして、トランプ批判を展開していたことだ。

 しかし、同年7月にトランプ氏が共和党の指名を獲得すると、安全保障問題の専門家としてトランプ陣営や副大統領候補となったペンス氏に取り入り、変わり身の早さを見せつけた。トランプ氏が11月、大統領に当選すると、ニューヨークに駆け付け、トランプ氏に自分を売り込んだ。

 陸軍士官学校を卒業した後、1986年から91年まで陸軍機甲部隊に所属、ドイツ駐留米軍の戦車指揮官も務めた。この後、ハーバード法科大学院に入り、卒業後は法律事務所などで働いた。2010年の中間選挙で「茶会党(ティーパーティー)」から出馬して下院議員に初当選した。

 キリスト教保守の福音派に属しているところはペンス副大統領と同じだ。同性愛や中絶、銃規制に反対。イスラム過激派に対する水責めなど拷問の容認主義者として、またイスラム嫌いとしても知られる。

 オバマ政権の環境規制や温暖化防止の「パリ協定」に強く反対、とりわけリビア・ベンガジの米領事館襲撃事件の対応についてヒラリー・クリントン氏(当時の国務長官)を痛烈に批判した。こうしたところが「不正のヒラリー」というキャンペーンを展開したトランプ氏に気に入られた。米第一主義など“トランプ主義”の熱烈な信奉者で、連日の機密情報のブリーフィングを通じて大統領の信頼を勝ち取った。

北朝鮮への秘密作戦主導

 イランの核合意についても、合意に重大な欠陥があるとして破棄を主張しているのもトランプ大統領と全く同じ。トランプ氏は5月中旬にも、核合意の破棄を決断する可能性が強いと見られているが、ポンペオ氏が国務長官に就任すれば、イランに対する強硬姿勢が加速、“イラン危機”が再燃する恐れが濃厚だ。

 北朝鮮に関しては、CIA長官として昨年夏以来、「金正恩が核ミサイルで米国を攻撃する能力を獲得するまで2、3カ月しかない」と警告、核とミサイル開発を遅らせるためのサイバー攻撃など秘密作戦を主導してきた。ポンペオ氏は金正恩氏が核やミサイルを放棄するということには懐疑的で、北朝鮮との交渉には期待を持っていないとの見方もある。

 米朝関係に詳しい専門家の1人は「仮に首脳会談が開かれても、交渉で金正恩が核・ミサイルを放棄すると考えるのは甘い」と指摘した上で、「結果は決裂か、トランプ氏が成果をアピールするために非核化に結び付かない合意をしてしまうという2つのケースしか考えられない」と語っている。

 決裂の場合は米国による軍事攻撃の可能性が一気に強まり、また米国にとっての脅威である弾道ミサイルの廃棄だけといった合意では、日本には何のプラスにもならない。いずれの場合も日本にとっては悪夢となるだろう。

関連記事

新着記事

»もっと見る