2024年11月1日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2023年4月13日

三重県で会った一歩進んだ生産者たち

 三重県では多くの先進的な生産者に会うことができた。その一人が国が進める「スマート農業実証プロジェクト」の実証地になったヒラキファーム(伊賀市)の平木伸二さんだ。このプロジェクトは、ロボット、AI、IoTなど先端技術を実証するとともに、技術導入による経営への効果を明らかにすることを目的としている。

 ヒラキファームは約100ヘクタールの田んぼでコメを生産しており、2020年、スマート農業実証プロジェクトで、直進アシスト田植機、水位センサー、ドローンなどを導入した。プロジェクトとは別に自費でもう1台直進アシスト田植機を入れている。

 今までは、運転するスタッフがまっすぐに田植するのに集中する必要があった。「極端な話、運転中は休むことができるようになり、1日中、田植機を運転してもまったく疲れない」とスタッフの森大輔さんは効果を語る。

直進アシスト田植機で作業効率を高める(筆者撮影)

 自動アシスト田植機の導入で作業効率が2割ほど高まった。約100ヘクタールの圃場の田植えには必須であるようだ。

 また、就農前はパン工場にて15年間勤務していた平木さんは「作業記録を取ることは当たり前のことで負担でない」と考え、気象情報や農作業の記録、作物の収量や品質といったあらゆるデータを集めるKSAS(クボタスマートアグリシステム)を活用し、スタッフ全員の作業記録を共有している。スタッフの勤務状況や農作業の進捗度合いだけでなく、水位センサーやドローンから得られる情報から作物の栽培環境や収穫時期を知ることができる。作物の栄養価や品質も詳細に管理できることから農産物の生産工程の安全性を認証する国内規格「JGAP」も取得している。

 その他、有機農業を手掛ける伊賀ベジタブルファームの村山邦彦社長は、英語が堪能なことから、「令和元年度アフリカ地域におけるアグリビジネス展開可能性調査委託事業」にも専門家として参画している。津市のつじ農園の辻武史さんは、21年度から22年度までのスマート農業実証プロジェクトでの経験を生かし、ドローンのシェアリングビジネスを模索する。このように異才な生産者が生まれ始めている。

全国でも生まれつつあるスマートな生産者

 こうした三重県の進歩的な生産者の多くが県北部・中部を中心に活動し、スマート農業に取り組む。その理由として、三重県四日市鈴鹿地域農業改良普及センター普及指導員である長野伸悟さんは、「三重県四日市市近郊では、30~40ヘクタール規模の農家が多い。この地域は名古屋にも近く、トヨタ関係企業など兼業先が豊富なこともあり、他の地域ほど離農が進んでいないため、極端な大規模農家は少数。JAや地元企業がドローンの普及を進めたこともあり、中規模農家の多くがドローンを所有している」と説明する。

 これらの農家には、以下のように、いくつか共通点があるようだ。

・建設業など他の業種の経験がある。

・大学を卒業している人が多く、ICT研究が盛んな三重大学大学院で学んでいる人もいる。

・稲作では経営規模が数十ヘクタール以上である。

・スマート農業など新しい技術を、補助事業を活用しながら積極的に取り入れている。


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