安保激変

2013年8月1日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 7月26日、「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の見直しに向けた日本政府の中間報告が公表された。防衛大綱は10年を見据えた防衛政策の基本指針で、現行のものは2010年12月に民主党政権下で策定されている。しかし、安倍政権は中国の海洋進出や、北朝鮮の核ミサイル開発など、安全保障環境の悪化をうけて、今年末までを目処に改定作業を進めている。

 中間報告では、「敵基地(策源地)攻撃力」、「海兵隊的機能」、「無人偵察機」、「統合の強化」などのキーワードが並んでいる。しかし、重要なポイントは「グレーゾーン」と「我が国自身の努力」である。

戦争でも平和でもない状態
「グレーゾーン」における領土防衛

 従来、日本の安全保障政策は、日本が直接攻撃を受けるシナリオよりも、朝鮮半島や台湾海峡で起こる危機が日本に波及するというシナリオを重視し、その中で日米同盟を基盤として安全を守ることが検討されてきた。本土の防衛に関しては、「基盤的防衛力」という概念に基づいて、自衛隊の部隊を全国に均等に配備し、最低限の防衛力を保有することが目指されてきた。

 しかし、ここ数年は戦争でも平和でもない状態、つまり「グレーゾーン」において日本の領土が脅かされるシナリオが現実味を帯びている。別の言い方をすれば、外交手段が尽きても、戦争には至っていない状態における領土防衛を考えなくてはならない。このため、日本自身が主体的に自らの領土を守る態勢を整えることが急務となっているのだ。

 現行の防衛大綱は部隊を固定するのではなく、弾力的に動かす「動的防衛力」という概念の下で、南西諸島の防衛を重視するなど、「グレーゾーン」における日本の防衛を前面に打ち出した点で評価できる。しかし、そのための手段が必ずしも十分に提示されなかったことは否めない。このため安倍政権は防衛大綱の改定を進めているが、今回の中間報告では足りなかった手段の追加が検討されている。

「海兵隊的能力」をどう導入するか

 「グレーゾーン」における防衛でまず必要となるのが、隙間のない警戒監視態勢である。常時日本周辺海空域の状況監視を行い、事態が起こる兆候をいち早く察知しなければならない。そのために、衛星、航空機、艦船、レーダーなどによる監視、米軍との情報共有が行われているが、今回の中間報告では高高度滞空型無人機(グローバルホーク)の導入が検討されている。この無人偵察機が導入されれば、より長期間・広範囲の警戒監視が可能となるため、大きな前進となる。

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