日本の外交安保政策
米国の本音と「オープンな保守化」


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米AEI日本研究部長のマイケル・オースリン(Michael Auslin)が、10月8日付WSJのオピニオン欄に、野田総理と安倍自民党総裁の間で、外交についての「ハード・ライン競争」が起きているとの趣旨の論評を寄稿しています。

 すなわち、自民党総裁として安倍晋三氏が復活したが、「地域における日本の孤立」(中国、韓国との問題の意)のために、来たるべき総選挙に向け外交政策が前面に出つつあり、ここで、野田総理と安倍総裁はハード・ライン競争をしている。

 野田総理は民主党政権になってから最も有能な総理で、米国との関係を修復し、次期主力戦闘機としてF-35を採用し、武器禁輸政策を修正し、中国を主要な脅威ととらえた新防衛大綱を発表するなどしている。

 野田総理は、常に「対中タカ派」であったが、石原知事の動きに応じて急いで尖閣を国有化したことで、そのイメージを確固たるものとした。野田総理は中国の圧力に屈することなく、海上保安庁の巡視船を50隻派遣するとともに、紛争は中国の経済を害することを警告した。

 安倍総裁は現役総理の時代に推進していた、3つのラインを推進しようとしている。一つは米国との集団的自衛権行使を可能とすること、一つは国家安全保障会議を設置すること、一つは自衛隊の地位と役割の強化だ。

 二人とも究極的には中国、韓国との関係を修復しようとするだろうが、それは宥和的立場よりも国益堅持の立場に立ってのものとなるだろう。安倍氏の国家主義は東アジアにおける緊張をさらに悪化させるだろうが、野田氏による突然の尖閣購入は最近日本の総理がとった措置の中では、おそらく、最も不安定化効果を持つものだった。

 次期総理が誰になろうと、外交、安全保障問題では保守的な立場を続けるだろう。それは日本と隣国との関係に一層の問題をもたらすだろうが、第2次大戦についての日本の謝罪を受け入れず日本と正常な関係を推進しようとしないことで、日本人に孤立感を与えている地域においては、それが一番現実的なやり方かもしれない、と論じています。

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 ワシントンにおける有数の日本・アジア専門家であるオースリンは、尖閣問題について、日本を支持し、中国の拡張主義を抑えることを提唱してきましたが、本論説は、日本にやや距離を置いており、日本の外交路線の保守化傾向を指摘しただけで、米国がどうすべきとの政策論がない点が特徴的です。日本外交の保守化傾向を客観的に描写し、概ね追認するような論調となっていますが、日本外交の保守化が行き過ぎ、それによって生ずる周辺諸国との紛争に米国が巻き込まれる可能性を憂慮し始めた兆候と取れないこともありません。

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