2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月22日

 論説中、尖閣国有化についての「野田氏による突然の尖閣購入は最近日本の総理がとった措置の中では、おそらく、最も不安定化効果を持つもの」とのオースリンの指摘は、「日本が仕掛けた」というイメージをワシントンに広めてしまいかねないもので、非常に危険であると言えます。

 第2次大戦における罪によるアジアでの日本の孤立に言及するのは、アメリカ人がアジアにおける日本の立場を語る時に用いる決まり文句のようなものです。しかし、少なくとも、ASEAN諸国においてこの問題は後景に退いており、中国や韓国を含めて考えても、通貨協力については言うまでもなく、貿易・投資関係においても、日本側の立場は総じて強いものと言ってよいでしょう。日本は資本、技術を中国以外へ振り向ける選択肢を有しているからです。つまり、日本はアジアにおいて孤立などしていないので、自らの努力を続けるべきです。

 ただ、何事も強硬策をもって善とするような、ハリネズミのように凝り固まったタカ派的外交路線を鼓吹すると、日本外交の硬直化を招き、いつかの時点で米国の支持をも失いかねません。日本の外交路線は、日米同盟を軸としながら、より外向きでオープンなものとして、内にこもるのではなく、地域の安定と繁栄を、地域諸国や関係諸国と力を合わせて実現していく、という、外向的で明るいトーンを前面に打ち出すのが上策です。「日米同盟は地域の国際公共財」という表現が用いられることがよくありますが、この線をしっかりと守ることが肝要であり、そういう保守化であるならば、米国としても望むところと言えるでしょう。

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