世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月12日

 今回の新彊ウィグル地区での暴動の原因は、ウィグル人が、新彊を中国の中央アジア、パキスタンへの経済進出の基地とする大規模開発の犠牲にされていることであり、開発が成功すれば中国は中央アジア、パキスタンを経済的に支配することとなろうが、その場合これら地域のイスラム教徒が反乱し、地域が不安定化する可能性がある、と米ジョージワシントン大学准教授のSean R. Robertsらが、7月15日付The Diplomatウェブサイトで述べています。

 すなわち、今回の新彊ウィグル地区での暴動の原因は、テロや分離主義、人権問題ではなく、中国中央政府による同地域の開発計画である。計画は中国の中央、南アジアへの経済的関与と関連しているので、反乱は、中国が西に向けて力を投影しようとする計画に対する重大な挑戦である。

 過去10年間、中国は新彊の急速な開発を図り、その結果、近代的鉄道網が設置され、大規模な都市化が行われ、商業投資が着実に流入した。中国政府は、開発は人種的対立を緩和させるためと述べているが、開発の結果ウィグル族の共同体は破壊され、何千人もが住居を追われ、漢民族が大量に流入し、ウィグル族は本来の自分たちの領土で置き去りにされつつある。

 新彊は中央、南アジアにおける中国の今後の政策にとって重要である。新彊を支配下に置けないと、中国から西に向かう陸路はインドとロシアを通ることになる。新彊の商業、金融インフラを完全に国の支配下に置けば、近隣諸国との協力の下に、西と南に通じる複数の重要な通商路が確保できる。

 すでに中国は、新彊を通るトルクメニスタンからのガスパイプライン、カザフスタンからの石油パイプラインを設置し、ペルシャ湾からパキスタン経由で新彊にいたるパイプラインのメガプロジェクト、アフガニスタンから新彊へのパイプラインの計画を検討している。同時に、中国は新彊から西と南の各地にいたる鉄道線の設置を中央アジア諸国、パキスタンと交渉している。新彊の2つの中心都市、ウルムチとカシュガルには、特別経済地域が建設中である。

 中国は、中央アジアとパキスタンを、新彊を経由して中国に利益をもたらす中継の中心に出来れば、過去10年間で東南アジアにおいて支配的存在となったように、今後何十年にもわたり、中央、南アジアで支配的な地政学的勢力となり得る。中国政府は、ウィグル人が政府の決める条件に従う限りこれらの計画に参加することを歓迎するが、ウィグル人はこれらの大規模計画に参画していないので、計画の実現の邪魔となっている。

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