2024年5月19日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年6月18日

NZ随一の観光名所テカポ湖の中国の若者達

 テカポ湖ではホステルに2泊したが、ベッドメーキング、室内清掃などの単純作業を担っていたのは全員中国人。聞くと出身地は山東省、南京、四川省と様々でWHビザで就労。大型スーパーマーケットに食料買出しに行くと従業員の半数以上は中国の若者だった。

 NZ在住3年のアラサー日本女子は「欧州や日本のWHの若者達は一般に時給の高い季節労働の農作業に従事する。他方で中国・韓国の永住目的の若者は長期雇用につながるサービス業を選択する」と分析していたが当を得ている。

 各地のキャンプサイトで出会った欧州やカナダの若者達は中古キャンピングカーを格安で購入してワイナリーやフルーツ畑などの農場を移動していた。

マレーシアのサラワク州クミンからワーキングホリデーでNZへ。2000ドル(=16万円)で買った中古キャンピングカーで農場から農場を移動して稼ぐ頑張り屋さん

元外交官が解説するNZの移民政策

 キャンプ場で遭遇したNZの元外交官氏は、「オーストラリアやカナダは毎年移民受入枠を設けて一貫した移民政策を堅持しているがNZは事情が異なる。オーストラリアやカナダは広大な国土があるがNZは島国で森林に覆われて耕作可能面積も小さい。NZはこうした事情を踏まえ常に適正人口規模を見直す必要がある」と指摘。

 NZは1990年には人口350万人であったが2020年に500万人を突破。30年弱で150万人、つまり40%も人口が急増。その結果恒常的に住宅不足となり5年ほど前には深刻な社会問題となったよし。当時は不動産価格が上昇し賃貸料も急騰。そのため低所得層はアパートが借りられずキャビンカーなどで寝泊まりする人々が増えたという。

 政府は当時移民受け入れを制限して、現在でも移民受入枠(年間の永住権付与枠)を公表していない模様。他方で現在オーストラリアへの労働力流出をカバーするために外国人労働者確保に躍起となっている。

 永住権取得申請はポイント制で審査されるが、NZで不足している職種をグリーンリストとして公表して積極的に誘致している。医療関係、建設、保育、介護、調理師などなど多岐にわたり資格・経験によりポイントが加算される。

 さらにフィリピン、ベトナム、インドネシア、中国などと政府間協定を結び一定期間NZで就労する技能労働者を誘致しているという。

キッチンで陽気に郷土料理を作るとび職のインドネシア男子

逞しいアジアの出稼ぎ労働者

 インバーカーギルのホステルでフィリピン人の陽気な連中と一緒になった。彼らは高圧送電線の鉄塔の保守点検作業をしていた。週日は午前6時に会社のマイクロバスがホステルに迎えに来て山奥の現場に行く。

 工具一式と補修部品を担いだ重装備の作業は相当な重労働だが、さらに足腰に厳しいのは鉄塔の上り下りという。しかも夏季の酷暑、冬季の極寒に晒されての作業。想像を絶する過酷な労働だ。

 週末は外出せずほとんどベッドでゴロゴロして音楽を聴いているというが、2年契約が無事終了すればフィリピンではビルが建てられるほどの大金が稼げるらしい。

 クライストチャーチの空港近くのキャンプ場のキャビンハウスで長逗留していたのは片言の日本語を話すインドネシア人建設労働者。彼らもすこぶる陽気で郷土料理らしきものを楽しそうに調理していた。

 聞くと日本で技能実習生として“とび職”を3年現場経験したと。NZでは高所作業専門家として建設会社と契約して渡航費用など全て支度金として受け取っており、さらに時給は日本の3倍以上らしい。日本の技能実習生制度ならばインドネシアの平均年収数年分をエージェントに前払いしなければならない。

 こんな雲泥の差があれば、日本が海外労働者受入を多少制度変更しても、近い将来日本へ働きに来るアジア人は激減するだろう。

クライストチャーチ市内の韓国女性がオープンした美容室。看板は英語・ハングル・漢字で標記されている。商売が軌道に乗り忙しくなってきたので韓国から若い美容師を呼び寄せた。

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