2024年5月19日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年6月25日

中国はNZにとり“遥か遠くに住んでいるお得意様”なのか?

 3月9日。オークランドから田舎暮らしに憧れて南島のオタゴ地方に移住したB氏48歳は「NZにとり中国は安全保障上の直接の脅威ではないと大半のキーウィは思っている」と指摘。(注:NZでは自国民を“キーウィ”と呼んでいる。オーストラリア人が自分たちを“オージー”と呼ぶように)
確かに東南アジアの国々や日本のように中国の艦船が領海侵犯したり中国漁船団が違法操業したりという身近な問題がないと問題意識も湧いてこないだろう。

 さらに「オークランドやクライストチャーチといった大都会以外では人々は地方紙(local paper)しか読まない。自分たちの住んでいる地域の身近な問題のほうが大事。例えば隣町で少女が亡くなった事案を事故ではなく殺人だと父親が警察に訴えているという記事が連日トップで報道されている。そんな土地柄なので国際問題には関心が低い」という。

 各地で折に触れて「中国をどう思うか」と聞いていたがB氏の見解がフツウのキ-ウィの中国観を代表しているように思えた。中国を安全保障上の脅威と考えるキーウィは皆無であった。

オタゴ地方の国道1号線沿いの牧場。国道の道端でバナナを食べていたら続 々と乳牛が集まってきた。NZでは乳牛も大自然のなかで放牧されている

資本主義の行き着く先は親中国の独裁国家なのだろうか

 ケケレング・ビーチのキャンプ場で知り合ったNZの元外交官氏の話を思い出した。資本主義国家ではITの発達により益々貧富の格差が急速に拡大し富の寡占化が加速しているという世界を覆う潮流について議論した。

 彼は「米国・北欧・EU・日本などほんの一握りの資本主義国家だけが未だに中間層が多数を占めており民主主義が機能している。問題は新興資本主義国家の大半でごく一部の金持ちと大多数の貧乏人という二極分解が急速に進行していることだ。こうした国家では政治家は不満を抱えた大衆が喜ぶような安易な政策を採用(populism)して対外的には反米・反西欧的姿勢を示すことで人気を博す。そして政権を維持するために次第に強権的になる。こうした強権的政権が支配する国々が今後世界中で増殖してゆくだろう」と予測した。

 そして「そうした国々は必然的に中国・ロシアとの関係を強めて行く。欧米・日本のような民主国家は地球上で10億人足らずの少数派になってしまう」と憂慮した。

 確かに中南米ではベネズエラ、ニカラグアなどの独裁国家、さらにはブラジル・アルゼンチンなども中国との関係を強めている。トルコ、イラン、そして南アなどアフリカ諸国も同様である。

 せめてキーウィやオージーが西側民主主義国家として熱烈的親日派であってほしいと切に願った。

以上 第5回に続く

   
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