世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年9月6日

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 8月1日付け米National Interest誌で、Dennis P. Halpin米ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院客員研究員は、中国との宥和策のために、米国は台湾へのコミットメントを減らすべきだという人がいるが、米国の西太平洋における安全保障にとって、台湾の占める地位は特別に重要であり、台湾への関与を減らせば、「米国の平和」(Pax Americana)は根底から崩れることになろう、と論述しています。

 すなわち、台湾は北東アジアと東南アジアを結ぶシーレーンに位置しており、もし中国がここを自らの支配下におけば、「第一列島線」を超えて、西太平洋への自由なアクセスを得ることができる。かつてマッカーサーが台湾を「不沈空母」と呼んだ理由もここにある。

 中国との宥和策を主張する人たちは、台湾をめぐる米中間の危機は容易により大きな戦争にエスカレートするとして、「台湾関係法」に基づく関与を放棄することを主張する。もちろん、中国は大いに歓迎するだろう。これは、結果的に中国の言う「核心的利益」を認めることを意味することとなり、長い歴史の目で見れば、1938年9月の英独間のミュンヘン会談のような効果を及ぼすことになるだろう。

 6月のカリフォルニアでの米中首脳会談では、習近平が、米国が行っている台湾向け武器輸出を停止する日はいつか、と聞いたのに対し、オバマは「台湾関係法」に基づき台湾への武器供与は続ける旨明言したと報じられている。この拒絶的なオバマの対応は評価できる。

 第二次世界大戦後の太平洋の秩序は、過去70年間の同盟関係や友好関係の基礎の上に成り立ってきた。その中でも、台湾が持つ戦略上の価値は極めて高いものである。台湾の地位は、今日の米国のアジアへの軸足移動(Pivot又はRebalance)でも、最も中枢的な役割を果たす。

 もし逆に、米国が、中国の台湾への威圧的政策に対し、妥協的な政策をとったらどうなるか。太平洋における米国の同盟関係はゆっくりと崩れ始めるだろう。そのショックは、日本、韓国、フィリピン、オーストラリアへと広がるに違いない。これらの国々にとっては、もし米国の強い対抗力に期待できなくなれば、中国の高圧的姿勢に対し、宥和していく以外道がなくなる。そうなれば、米国自身、世界の成長センターであるアジアから撤退を余儀なくされよう。

 台湾との協力関係は太平洋における米国の安全保障体制にとって必須の連結の輪の一部(A Key Link)である。台湾海峡の「現状維持」を守るため、米国が台湾に協力することは、台湾に自信を与えることとなる。

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