2024年5月20日(月)

バイデンのアメリカ

2023年8月20日

刑務所から大統領執務の可能性も

 このような大がかりで大胆な長期にわたる捜査の結果、トランプ氏らをついに大陪審で起訴に追い込んだことについて、ファニ・ウィリス主任検事(民主党)は直後に記者会見に臨み、「今回の捜査に政治的動機はないか」との質問を受け、次のようにコメントした:

 「私たちは厳格に州法に依拠して捜査してきた。法律は完全に超党派的なものである。当検察局で私自身これまで、1万2000件以上の刑事案件に携わってきたが、どのケースも法に忠実に従ったものだった。RICO法に基づく起訴は今回で11回目になる……しかし、私たちは常に同じプロセスをへてきた。すなわち私たちはファクトを見つめ、法を見つめ、そして告発に取り組んできた」

 一方、トランプ氏は起訴発表後、過去3回の起訴の時と同様、「バイデンにそそのかされた政治的魔女狩りだ」「(来年大統領選に向けた)自分の政治キャンペーンの真最中に仕掛けられたものであり、民主党による腐敗しきった捜査にほかならない」と即座に一蹴して見せ、意に介さないかのような反応を見せた。

 しかし、ニューヨーク・タイムズ紙など複数の有力メディア報道によると、トランプ氏は内実、過去4回の起訴の中で、今回のケースを最も恐れているといわれる。

 その理由として、以下のような点が挙げられる:

1.ジョージア州RICO法によると、被告が有罪となった場合、必須条件として「最高刑期20年、最低で5年」が定められており、連邦控訴審、連邦最高裁などの介入により覆されることはない

2.トランプ氏ら被告19人が今月25日に、罪状認否のため、ジョージア州地裁への出頭を命じられており、その際、過去3回の起訴の時と異なり、例外なく全員が一人ずつ、容疑者としての警察記録保存用に「mug shot」と呼ばれる顔写真の撮影が義務付けられる。写真は公表される

3.来年3月に予定される公判は、連邦裁判所での公判と異なり、審議の模様がTV中継されることになっている

4.トランプ氏は来年以降に連邦裁判所で有罪判決を受けたとしても、次期大統領選で勝利し、25年1月20日に再び大統領に就任した場合、大統領権限で自らを「恩赦」するか、その時点の副大統領に同様措置を取らせ、罪から逃れる可能性が指摘される。しかし、ジョージア州法に依拠した裁判で有罪判決を受けた場合、連邦政府介入の道は閉ざされる 

5.もし、24年11月の大統領選より以前にトランプ氏がジョージア州で有罪判決を受け、服役を命じられた場合、刑務所内の独房から選挙活動継続を余儀なくされることになる

 上記のような理由を踏まえ、政治メディア「The Hill」は専門家のコメントとして次のように報じている:

 「とにかく、彼が有罪判決を受け服役しながら大統領に返り咲いた場合、米国政治史上、国民がかつて経験したことのない前代未聞の異常事態となることが予想される。刑務所内からの選挙活動や(当選後の)大統領執務という、目を覆いたくなるようなシナリオは誰も考えたくないが、彼が現段階で、共和党指名候補レースで独走態勢にあり、大統領再任もありうるだけにやむを得ないだろう。いずれにしても、今回のジョージア州フルトン郡大陪審で起訴されたことは、トランプにとって最大の脅威となることは確かだ」

 なお、トランプ氏は、今回の起訴を受け、ただちに反論するための記者会見を今月21日に行い、「大規模な選挙不正が行われたことを裏付ける独自調査結果を公表する」と予告していた。

 しかし、17日になって急遽、会見中止を発表した。

 中止理由について、米ABCテレビによると、同氏の弁護団が「選挙不正についての根拠の疑わしい調査結果を出せば、今後の法廷審議を複雑にするだけだ」として反対したためという。

 トランプ氏の苦悩は、ますます深まるばかりだ。

   
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