オトナの教養 週末の一冊

2013年8月30日

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映画女優アンジェリーナ・ジョリーの選択

 今年5月、米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がん予防のために両乳房を切除したと公表した。母親が若くしてがんで亡くなったことから検査を受けたところ、がんになる可能性が高い遺伝子変異が見つかったという。

 ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿文では、「できるかぎり乳がんになるリスクを減らすため、手術を受けることを決断した」と語っている。87%とされた乳がんの確率は、手術の結果、5%以下まで低下したという。

 アンジェリーナさんのように、手術をするかしないかを含め、自分や家族の病気に対する治療法を選ぶ場面が、だれにでもある。あるいは、裁判員として被告を有罪とするか無罪とするか、厳しい判断を迫られる場面がある。

 私たちは日常生活のさまざまな場面で、大なり小なり選択を迫られる。そのとき、判断を左右するのが、「確率」や「リスク」である。しかし、それらの言葉の意味や数字を正しく理解しているだろうか。

 本書は、人生で直面するであろうさまざまな場面に即して、数字に“だまされず”に、リスクを正しく理解する方法を説く。

誤解された副作用の確率

『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで』
(ゲルト・ギーゲレンツァー 著、吉田 利子 翻訳 早川書房)

 ある抗うつ薬の副作用について、著者の友人の精神科医は、患者たちに、「この薬をのむと三〇パーセントから五〇パーセントの確率で性的問題、つまり勃起不全や性的関心の喪失が起こることがあります」と説明してきた。

 もし、あなたが患者だったら、どう受け止めるだろうか?

 この精神科医は、本書で紹介される統計的思考法(いいかえると、「数字オンチの解消法」)を知ったあと、説明の仕方を次のように変えた。

 「この薬を処方した患者一〇人のうち三人から五人くらいが性的問題を経験します」。

 二つの説明は数学的に同じことを意味しているのに、患者の受け止め方は大きく異なった。パーセンテージではなく、頻度で副作用のリスクを説明すると、患者は以前ほど薬の服用を不安に思わないらしく、「自分がその三人から五人のうちの一人だったらどうすればいいでしょうか」と尋ねてくるようになったという。

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