8月12日付け英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙コラムニストのGideon Rachmanは、最近の日本外交はあまりに挑発的で、中韓が反発するのも無理もないと苦言を呈すとともに、日米同盟を緩め、日本が米国への依存度を下げることで、自国の安全に責任を持つようにした方が、かえって慎重な行動を促すのではないか、と述べています。
すなわち、日本の言動は、軽はずみと悪巧みの間をふらついている。ここ数ヶ月の間、日本はアジアの近隣諸国を怒らせるとともに、西側の同盟諸国を困惑させるような、外交上の失態ばかりしている。
その例の一つが、先日進水した護衛艦「いずも」である。海上自衛隊の増強は、中国の軍事力増強に対する妥当な対応であるが、その船に1930年代の中国侵略に参加した旧海軍の艦名を付けたことで、中国は意図的な挑発として日本を非難している。
また、数カ月前には、細菌兵器の人体実験で悪名高い部隊の番号である「731」と書かれた自衛隊の練習機に安倍総理が試乗する写真が報道された。当時、私(ラックマン)は韓国に滞在していたが、韓国人のほとんどはこれを日本の意図的な挑発と捉えていた。
中国が台頭する中で、世界第三位の経済力を持つ日本が、自国の安全保障を米国に依存しているというのは、異常なことである。また、米国は、日本と中国との戦争に巻き込まれる可能性を懸念している。
よりバランスのとれた日米関係は、米国の日本に対する安全保障上の約束を和らげ、東シナ海の小さな領土紛争が世界大戦につながるリスクを低くする。その代わり、日本は、軍の増強を図り、そうした行為は奨励されるだろう。
このようなアジアにおける戦略バランスの変化は、中国や韓国はもちろん、それ以外の国々にも動揺を与えるであろう。その結果、東アジアでの問題への対処には、より慎重さをもって行うことを余儀なくされるであろう、と述べています。
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英国の論調は、知的水準の高さに定評のある新聞や雑誌であっても、ことこの前の戦争の記憶となると、「勝者は全て善、敗者は全て悪」という、論理学では証明のしようもない命題を一歩も譲らない傾向にあります。その点、東アジアの安全保障に責任を持つアメリカの評論の方が、精神的度量の広いことが多いです。