2024年5月14日(火)

World Energy Watch

2023年9月28日

 このため、増加の一途を辿る電力需要に対応しながら、クリーンエネルギーの普及促進を図るため、太陽光発電や原子力発電の導入を進めている。17年に発表した「エネルギー戦略2050」では、25年までの発電比率目標は、再生エネルギーが44%、ガスが38%、クリーン・コール(石炭燃焼時の有害物質排出の除去)が12%、原子力が6%に設定された。

 まず、太陽光発電の導入はドバイやアブダビを軸に展開している。ドバイではムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム・ソーラーパーク(MBR Solar Park)が5期にわたって設置され、発電設備容量は30年までに5000メガワット(MW)まで拡大する予定だ。

 アブダビでは、シャムス集光型太陽熱発電(100MW)やヌール・アブダビ太陽光発電所(1177MW)が建設された他、同国最大規模のダフラ太陽光発電所(2000MW)プロジェクトも進行中である。

 またアブダビでは、クリーンエネルギー都市「マスダールシティ」の建設も06年に始動した。開発を手掛けるのは、アブダビ首長国政府系「ムバダラ投資会社」傘下にある再生可能エネルギー関連企業「アブダビ未来エネルギー会社(ADFEC、通称マスダール社)」である。

 ゼロ・カーボン都市を目指すマスダールシティでは、電力全てが太陽光などの再生可能エネルギーで賄われる他、ガソリン車の同市内への進入が禁止され、移動は電気自動車等で行われる予定である。完成は当初計画よりも遅れているものの、2030年までに実現する見通しである。

 次に、UAEはアラブ湾岸諸国初となる原子力発電所を建設した。09年12月、アブダビ原子力公社(ENEC)は原発の発注先を韓国企業連合に決定した。

 アブダビのバラカ原発(発電設備容量 1400MWの 原子炉 4 基)は12年7月から建設工事が始まり、21年に1号機が、22年に2号機が、そして今年2月に3号機が商業運転を開始した。原発は少量の燃料で安価に発電ができ、再生可能エネルギーと同様に、温室効果ガスの大半を占める二酸化炭素を排出しないメリットを持つ。

 太陽光発電と原発の導入により、UAEは国内で発電用ガスの消費を抑えることで、天然ガスを輸出用に割り当て、ガス収入の拡大につなげることが可能となる。実際、米エネルギー情報局(EIA)によると、21年の発電比率では、再生可能エネルギーのシェアが総発電量の5%、原子力が1%に上昇したことで、ガス火力発電の割合17年時の98%から94%まで低下するなど、発電用ガスの抑制に向けた着実な成果がみられた。

天然ガスの自給へ舵を切る

 UAEはガス生産量を増加させ、30年までに天然ガスの純輸出国になることを目指している。23年3月、UAEのアブダビ国営石油会社(ADNOC)は、子会社の天然ガス開発企業「ADNOCガス」の株式を新規上場させ、新規株式公開(IPO)を通じて資金調達に動いた。

 この背景には、豊富な埋蔵量を誇る天然ガスの開発を本格化させ、ガスの自給体制を構築するとともに、輸出の更なる拡大につなげる狙いがある。ADNOCは新規プロジェクトを通じて、世界的な需要増に対応するため、LNG年間生産能力を2倍以上の1560万トンに引き上げる計画だ。

 加えて、国内ガス生産の増加は、UAEの対カタール依存度の低下にもつながる。UAEは、11年の「アラブの春」以後に台頭したイスラーム主義勢力の支援や対イラン関係をめぐってカタールと対立し、17年6月にはサウジアラビア、バーレーン、エジプトともに、カタールと断交した。


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