2024年4月28日(日)

World Energy Watch

2023年9月28日

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を機に、西側諸国が対ロシア制裁の一環として、ロシアからのエネルギー輸入の抑制を図り、ロシア産ガスの代替調達先の確保を進めたことで、天然ガスの争奪戦が激化した。こうした状況下、石油産出国と知られるアラブ首長国連邦(UAE)も天然ガスの生産・輸出を行っており、ウクライナ危機下でガス供給国としての存在感を強めようとしている。

(starpik/gettyimages)

UAEの天然ガス動向

 UAE産ガスは主に原油処理時に分離される随伴ガスであるものの、同国には未開発のガス田も存在している。BP統計によれば、UAEの天然ガス確認埋蔵量は2020年末時、世界第9位の約6兆立法メートルとされ、可採年数(R/P)は107年である。この点より、UAEは産ガス国としても大きなポテンシャルを秘めている。

 UAEは、国内で生産した天然ガスの大半を発電用燃料に利用している。英国拠点のエネルギー研究所(Energy Institute)によれば、22年の天然ガス生産量は580億立法メートル(世界第14位)であった。

 一方の消費量は、約700億立法メートルに達し、国内生産分を上回る。この背景には、電力需要の急増がある。人口増加や経済発展に伴い、UAEの電力消費量はこの20年間で、39テラワット(TWh)から130TWhに推移し、約3倍の増加を記録した(国際エネルギー機関)。

 このため、UAEはカタールからドルフィン・ガスパイプライン経由、もしくは液化天然ガス(LNG)の形でガスを輸入しており、カタール産の輸入量は22年消費量の28%相当(194億立法メートル)にのぼり、ガス調達面でのUAEのカタール依存が顕著となっている。

電源構成の多角化へ

 こうしたガス事情を踏まえ、UAEは電源構成の多角化を行うことで、発電用ガス消費の抑制を試みている。ただ、ガス火力発電が発電比率で9割以上を占め、主力電源としての重要な役割を担っている中、人口増加や経済規模の拡大、補助金による電気料金の低価格化を踏まえると、電力需要の増加傾向は今後も続くと予想される。加えて、温室効果ガスの排出削減を目的とした脱炭素化への対応も余儀なくされている。

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