2024年12月22日(日)

サイバー空間の権力論

2013年9月21日

 前回は米国家安全保障局(NSA)による極秘監視プログラム「PRISM」の存在を暴露したエドワード・スノーデン氏の一連の事件から、情報の自由と安全保障の問題について考察した(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2966)。現在スノーデン氏はロシアに一時的に亡命中であるが、同氏が告発した情報が新たに報じられており、彼を中心としたこれらの事件はまだまだ議論を呼ぶだろう。

 ところで、内部告発によって世間の注目を浴びるのとは対照的に、日本では自らの不法行為を自発的に自慢する若者が後を絶たない。彼らの中には法的に処罰される可能性のある者もいるが、そのような報道があってもなお同様の事件が頻発している。

 彼らはなぜ自身の罪を自慢してしまうのか。それはインターネットの構造上の問題なのだろうか。今回は、集団主義的倫理とSNSの関係を検討したい。

犯罪自慢が多発

 事の発端は2013年7月、大学生がUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のアトラクション運行を妨害したことをTwitterに書き込み、その後学生が書類送検処分となったことにある。事件はテレビ等のメディアでも取り上げられたが、その後同様の事件が頻発したことから「Twitter犯罪自慢事件」として注目を浴び始めた。

 特に、コンビニのアルバイト店員がアイスクリームのショーケースに入った写真を、また飲食店のアルバイト店員が冷蔵庫に入った写真をそれぞれTwitterにアップロードした事件が有名だ。これらの事件に対する反響は大きく、中には閉店に追い込まれるケースや、逆に掲載した本人を訴える構えの店舗もある。

 その他、未成年の飲酒・喫煙告白や、逮捕までは行かなくとも炎上した上に本人がアカウントを削除する件など、事件は枚挙に暇がない。実際にこれらの事件をまとめたサイトが存在するが、7月以降は数日に一件のペースで何らかの行為がTwitterに投稿されている。彼らはTwitterを実名で登録しているケースもあれば、投稿内容、写真、他ユーザーとのやりとりの中から本人が特定されるケースもある。いずれにせよウェブでの記録は消去しきれないものが多く、彼らは社会的制裁を一生受け続ける可能性もある。

 無論、以前から「ミクシイ」上でも同様の事件は確認されており、また少なからずFacebookにも夏以降同様の事件が生じている。事件が注目されたのは、あくまで同時多発的に大量の事件が生じたからなのだ。

SNSによる可視化――ネットリテラシーの欠如

 なぜこうした事件が生じるのか。よくあるコメントとして、最近の若者は罪の意識がないといったものがあるが、これは必ずしも的を得ていない。


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