NHK「よみがえる関東大震災」「地震火災から命を守る」が照らし出す90年前の教訓

「あまちゃん」の物語の先に見えるニッポンとは


田部康喜 (たべ・こうき)  東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

田部康喜のTV読本

月刊WEDGEに2008年6月号まで約10年間、110回にわたって連載したコラム「読むテレビ」が、インフィニティで復活します。 コラムを読んでくださった方が、そのテレビ番組を見なくても番組について語れるようになる、というコンセプトは変わりません。大きな転換期にさしかかっているテレビ界。スマートフォンやスマートパッドの登場によって、映像コンテンツの価値はより高まっていると思います。ぜひご覧いただきたい番組をご紹介してまいります。掲載回数は月に2回で、第1・第3水曜日にアップ予定です。

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NHK連続テレビ小説「あまちゃん」は最終回を迎えて、主人公の天野アキ(能年玲奈)と足立ユイ(橋本愛)のふたりは、北三陸鉄道のホームを飛び降りてかけていく。東日本大震災による津波で流された鉄道が一部回復した日、これから東京に向けてつながる鉄路を。

 ドラマは東日本大震災をはさんだ3年間を描いて、その最終回のその日の設定は、2012年7月1日である。

 「あまちゃん」の脚本をてがけた宮藤官九郎によって、震災前と震災後の社会に懸け橋がかけられ、人々が震災後の未来に向かってようやく顔をあげられるようになったのではないか。

次の関東大震災の可能性を解き明かしていく

 NHKスペシャル・MEGAQUAKEⅢ「よみがえる関東大震災~首都壊滅・90年目の警告~」(8月31日)と、首都圏スペシャル「地震火災から命を守る~関東大震災90年~」(8月30日)は、震災後の世界を歩み始めた我々に、祖父母や父母が体験した大震災の教訓を思い出させる。

 1923年9月1日午前11時58分、マグニチュード7.9の巨大地震が首都圏を襲った。その揺れは10分間にもわたった。

 フィリピン・プレートが陸のプレートの下に潜り込むようにして、ひずみが起きて、地震が発生する「プレート境界型」の巨大地震だった。

 震災とその後の火災による死者は、10万5000人に達した。

 NHKスペシャル「よみがえる」は、関東大震災が発生する前から警告を鳴らしていた、地震学者の今村明恒の研究に焦点を当てると同時に、彼を中心とする再現ドラマ、そして現代の地震学者の証言を綴りあわせながら、次の関東大震災の可能性について解き明かしていく。

 東大助教授だった今村と、同じ教室の上司にあたる教授の大森房吉との確執と和解の物語は、吉村昭の読み継がれるべき名著である『関東大震災』のひとつの大きな柱となっている。科学的な分析に加えて、古文書などによって、今村は関東を襲う巨大地震の可能性が高まっていることを、雑誌に論文を寄せた。今村の本意は、地震に備える都市づくりを進めることを提言するものであったが、新聞は巨大地震が近いことをセンセーショナルに報じた結果、窮地に立つ。東京市民が避難する騒動に至って、教授の大森が、今村説をまったくのでたらめの「浮説」とまで断定した。

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著者

田部康喜(たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

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