自由な言論氾濫による共産党批判を極度に恐れる中国の共産党政権だが、北京を拠点とする比較的リベラルなスタンスで購読者を獲得してきた『新京報』が、政府によるネットに対する世論監視の現状を詳細にレポートして話題を呼んでいる。ネット監視に200万人が動員されているという件には中国はもちろん、欧米や日本のメディアも驚き飛びついた。
政府公認となった「ネット世論分析師」
これまで「ネットでのデマをなくせ」、「違法な書き込みは取り締まれ」という政府の声ばかりが報道され、実態はよく解らなかった。日本で比較的知られる中国のネット監視要員については、「ネット評論員」という形で政府に雇われ、政府や党に批判的な記事を政府に通報したり、反論することで書き込み1本について5毛(1元の半分:1元は約16円)もらっていることから名づけられた「五毛党」の存在が知られている。
しかし取り締まりや監視の実態が伝えられることは稀であったから、10月3日付『新京報』の特集レポートは話題を呼び、多くの新聞メディアに取り上げられたのだ。以下でこの記事「ネット世論分析師:やるべき仕事は削除ではない」を抄訳で紹介しよう。
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【2013年10月3日 新京報(抄訳)】
10月14日から18日にかけて『人民日報』紙の「ネット世論調査室」は初めて「世論分析師」の研修を行うが、この研修には世論分析や分析・判断の方法、世論から生じる危機処理、世論対応等の8つの科目が含まれる。テストに合格すると「ネット世論分析師(中国語では網絡與情分析師)」の証明書と従業免許がもらえる。
ネットから人々の視点や態度について情報を収集し、整理して報告書にまとめ政策決定者に送る、というのが「ネット世論分析師」である。目下、全国にはだいたい200万人超がこの仕事に従事している。こうした人々は党の宣伝部門やネット、企業等に所属している。
このほど政府の人事社会保障省(人力資源社会保障部)就業研修技術指導センターと『人民日報』のネット担当部門が共同でネット世論分析師の職業訓練計画を起動させたことで「ネット世論分析師」は政府公認の職業となった。
この業界で働く唐小濤さんは仕事を始めてまだ半年にならないが、毎日パソコンの前に座り、ソフトを使って、顧客の設定したキーワードを入力して顧客にマイナスな情報を検索し、内容をダウンロードして顧客に渡している。