2024年5月19日(日)

勝負の分かれ目

2023年12月25日

 大谷選手が今回、年俸の「後払い」を選択したことでクローズアップされた「贅沢税」も、メジャーの「共存共栄」の一環策である。選手会との条件交渉なども厳しく、リーグ側はビジネス面で常に成長を続けていく必要がある。

 市場規模が拡大するMLBは、莫大な資本を持つオーナーの「投資対象」にもなる。それを裏付けるかのように、フォーブスが毎年恒例で発表する調査では、全30球団の平均価値は23億2000万ドル(発表時のレートで約3040億円)で、前年比12%も増加している。トップは、ヤンキースの71億ドル(同約9283億円)と前年より18%上昇し、フォーブス誌が調査を開始した98年から26年連続で1位。大谷選手を獲得したドジャースは2位で、48億ドル(約6276億円)となっている。

 球団価値の上昇は顕著で、エンゼルスが売却を検討した22年当時の報道によれば、現オーナーのアート・モレノ氏が03年途中にウォルト・ディズニー社から買収した金額は1億8400万ドル(同約250億円)だったのに対し、売却額は30億ドル(同4360億円)を超える見込みとされていた。

日本球界は選手流出を止められるか

 近年は日本のプロ球団がポスティングシステムによるメジャー移籍を容認するまでの在籍年数も短くなっている。今オフには、プロ4年目で22歳のロッテ・佐々木朗希投手がメジャー移籍の意向を持っていることが報道されるなど、年齢的なハードルも低くなりそうだ。

 日本球界でプレーする外国人選手は「助っ人」と呼ばれることがあるが、日本からメジャーに移籍する選手に対し、「挑戦」という言葉は使われなくなってきている。文字通りに「戦力」として破格の待遇で迎え入れられる「移籍」が実情で、日本人選手が有力な「補強対象」となっている。

 選手からすれば、お金が全てではなくても、年俸はプロアスリートの重要な評価軸である。莫大なマネーがうごめくメジャーへの移籍は今後も続き、海の向こうから大活躍のニュースが報じられるだろう。

   
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