WEDGE REPORT

2013年10月21日

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松田康博 (まつだ・やすひろ)

東京大学大学院情報学環教授

1965年生まれ。防衛省防衛研究所主任研究官、東京大学東洋文化研究所教授などを経て、2012年より現職。専攻は中台関係論、日本の外交・安全保障政策。編著に『NSC 国家安全保障会議―主要国の危機管理・安保政策統合メカニズム―』(彩流社、09年)など。

 諸外国では、大学教授やシンクタンクの研究員が政治任用される事例があるが、日本のNSCが今すぐそうする必要はない。むしろ、行政経験がなく、政権や国家を支える忠誠心や覚悟がないならば、彼等は「お荷物」と化してしまう。まず公務員制度を改革し、秘密保全法制を整備し、情報のクリアランスを官民の壁を越えて設け、諮問制度やインターン制度等を充実させる必要がある。

 次に大学の人事制度を調整し、時間をかけて官界と学界を行き来する安保・危機管理の労働市場を各世代で作っていけば、民間の研究者がこの分野で能力を充分発揮することも可能になるはずである。

 NSC設置を機に、日本はより効率的な安全保障・危機管理行政が行えるよう前記の課題解決を図るべきであろう。国家の存亡や国民の生命財産の安全に直結するハイエンドの危機から、放置したり、対処を怠ったりすることで危険なエスカレーションを招きかねないローエンドの危機に至るまで、NSCは先手を打って問題を防止しなければならず、不幸にも危機が発生した場合には、迅速に対処していく役割を果たさなければならない。そのためには、オールジャパンの態勢を一刻も早く作り上げることが必要である。

 最後に、NSCに対する民主的監督機能の強化、言い換えるならば国民と国際社会への「説明責任(アカウンタビリティ)」と「記録責任」を強める必要性を強調したい。集権とは「諸刃の剣」であり、集権された政府が「迅速に」過ちを犯した場合、対処すべき問題がさらに悪化する可能性がある。集権に伴い、内外への説明責任や、将来の国民のための記録責任は増大する。特に秘密保護の強化は、諸外国との情報共有のために必須であるが、それを組織防衛のために濫用することは厳しく戒められなければならない。

 国家の安全は死活的に重要な国益であるが、そのために自由や民主主義を犠牲にしないよう、政府は相応の努力を払わなければならないのである。

◆WEDGE2013年11月号より










 

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