2024年5月20日(月)

「永田町政治」を考える

2024年1月3日

三木、岸田の共通点

 三木内閣と岸田内閣の共通点は、三木、岸田両氏とも、比較的小派閥出身で党内基盤が脆弱であることだろう。

 戦前から各党を渡り歩いてきた三木氏は党内左派といわれ、その派閥は時代にもよるが20人前後と小ぶり。しかしながら、総裁選など政局の節目でキャスティングボードを握ってきた。権謀にたけていた半面、身辺は清潔で、「クリーン三木」などともいわれた。

 岸田派は所属議員46人党内第4派閥にすぎず、軽武装、経済重視の吉田茂元首相、池田勇人元首相の流れをくむ。三木氏同様、岸田氏自身も党内ではリベラルと目されているが、防衛費の思い切った増額など、やはり機をみるに敏なところがある。

 三木氏は、ロッキード事件を好機として政敵、田中氏を追い詰めたと批判された。岸田氏も、政治資金パーティー問題につけこんで、〝安倍派離れ〟を画策したといわれるのも似通っている。

 いま問題になっている自民党各派の政治資金集めの原型、政経文化パーティーが三木内閣の時にスタートしたこと、問題になっている政治資金規正法もこの内閣の時に企業・労働団体が強化されたことも因縁めいている。

〝岸田おろし〟みられず

 相違点も少なくない。現政権の場合、〝岸田おろし〟が広がりを見せていないなどがそれだ。これこそ24年になっても岸田内閣が持ちこたえるのではないかという観測の根拠になっている。

 各紙が毎月行っている世論調査をみると、次期総裁としての呼び声が高いのは、石破茂、小泉進次郎、河野太郎の〝御三家〟3氏はどこのメディアの調査でも上位を占める。

 党内では、石破元幹事長は過去の総裁選結果で見られるように、党内とくに議員の間での人気がいまひとつ。小泉元環境相は経験不足で手腕に不安があり、河野デジタル相は、その傲慢さを嫌う人が少なくない。3氏についで人気が高い高市早苗経済安保担当相は保守色が強く、支持拡大は容易ではない。

 今回のスキャンダルを自らの〝安倍派ばなれ〟に利用しようとしているともいわれる岸田氏に対して、安倍派が反撃に出るのではないかとの予想もある。親分を追い詰めた三木氏に対して田中派が報復に出たように、だ。

 しかし、安倍派が99人の大勢力といっても、今度の事件で幹部が根こそぎ捜査対象、派閥の存続すら危ぶまれている中では、反転攻勢は思いもよらない。

 岸田氏と距離を置く二階派も捜査対象で、二階俊博氏の指導力にも年齢の問題などから陰りが見え、無派閥の菅義偉前首相への支持もどの程度のものか判然としないことを考えれば、自らを脅かす〝外敵〟に岸田氏が神経質になる必要は少ない。むしろ岸田派で首相が官房長官に起用した林芳正氏、外相の上川陽子氏のほうこそ、気になる存在だろう。


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