2024年5月20日(月)

キーワードから学ぶアメリカ

2024年1月13日

本選挙、予備選挙とは?

 日本では、大統領選挙を予備選挙と本選挙に分けて、11月の第1月曜日の翌日の火曜日(11月2日から8日の中で火曜日に当たる日)に行われる選挙のことを本選挙と呼ぶことが多い。だが、これは英語ではgeneral electionと呼ばれるもので、本選挙というのとはニュアンスが異なっている。

 実は米国で最終的に大統領を選ぶのは、各州から選ばれた大統領選挙人が12月に行う選挙である。日本で本選挙と呼ばれる11月の選挙は、各州で大統領選挙人を選ぶための選挙である。

 もっとも、大統領選挙人の選挙は、最終的な選挙の時に誰に投票するかを宣言している人を選ぶものであり、投票用紙にも正副大統領候補の名前が記されているため、11月の結果と12月の結果が変わることは基本的にない。そのため、11月の選挙を本選挙と呼ぶのはあながち間違いではない(米国でも注目を集めるのは11月の選挙であり、よほど特殊な場合を除いて12月の選挙に注目が集まることはない)。

 このような複雑な制度(大統領選挙人方式)が導入された現実的な理由の1つは、自動車も飛行機も無い時代には大統領候補が全米を回るのは不可能だったので、各州から代表を選んで大統領を選ばせたことだったと推測される。だが、この制度が今日でも残っているのは、州の主権の問題との関係があるためだ。

 一般的には米国は英国との戦争に勝利して独立したと考えられているが、厳密には、独立戦争に勝利して国家(state)となったのは、英国の植民地となっていた諸邦(それが後に州になる)だった。それが一緒になって作られたのが合衆国(United States of America)である。

 そのため、もともと州政府は主権を持つ存在だというのが米国の連邦制を考える上での大前提である。大統領には独立した諸州のまとめ役という位置づけが与えられていたので、大統領を選ぶのは基本的には州だという思想が背景にある(したがって、プエルトリコやグアムのような非州地域の住民は、首都ワシントンDCの住民を例外として投票権を持たない)。今日でも大統領選挙人制度が存続しているのは、連邦主義の考え方が強く残っていることの表れである。

大統領選挙人とは?

 大統領選挙人の数は、各州の連邦上院議員の数(一律2人)と、人口比例で各州に割り当てられる連邦下院議員の数の合計と定められている。非州地域の住民は原則投票権を持たないが、コロンビア特別区(首都ワシントンDC)は例外で、3人の大統領選挙人が与えられている。

 この数は合衆国憲法作成時のさまざまな妥協の結果として定められた。建国時、人口の少ない州は「どの州も主権国家として平等だ」という観点から全州同一の選挙人数を求め、人口の多い州は、「人口が多い州が多くの選挙人を持つのは当然だ」と主張した。その妥協の産物として、連邦議会の議員数は上院が一律2人、下院は人口比例と決められた。大統領選挙人の数はその数を足し合わせることになったのである。

 また、大統領選挙人の政党の内訳(例えば州に割り当てられた大統領選挙人の数が20として、そのうち何人を民主党、何人を共和党に割り当てるか)は、基本的には州政府が決めることになっている。今日では、一票でも有権者の票が多かった政党に全ての大統領選挙人の数を割り当てる州が大半だが、それは合衆国憲法に定められているのではなく州政府の決定事項である。


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