2024年7月14日(日)

キーワードから学ぶアメリカ

2024年1月13日

 1月5日に米連邦最高裁判所は、トランプ前大統領の大統領選挙への出馬資格をめぐる判断を早期に行うため、2月8日に口頭弁論を行うことを決めた。これは、合衆国憲法修正第14条3項の解釈に基づき、コロラド州最高裁判所がトランプには公職就任資格がないために予備選挙から排除すると判断したことに対応するものである。メイン州も同様の判断をし、同州の州務長官が予備選挙の投票用紙にトランプの名前を記載しないと発表した。

(shironosov/gettyimages)

 これまでミシガン州やミネソタ州の最高裁判所は予備選挙への出馬を認める判断をするなど判断が分かれている。連邦法は海外在住の軍人や有権者に投票日の45日前までに投票用紙を郵送するよう求めているが、連邦最高裁判所が審議を開始したのを受けて、コロラド州やメイン州でも予備選挙の投票用紙にトランプの名前は載ることになる。ただし、連邦最高裁判所がトランプに出馬資格がないと判断した場合は、仮に勝利した場合でもトランプに投じられた票はすべて無効となる。

 合衆国憲法修正第14条3項は、以下のように定めている(訳はアメリカンセンター)。

 連邦議会の議員、合衆国の公務員、州議会の議員、または州の執行部もしくは司法部の官職にある者として、合衆国憲法を支持する旨の宣誓をしながら、その後合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の上院および下院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、武官を問わず合衆国または各州の官職に就くことはできない。但し、連邦議会は、各々の院の3分の2の投票によって、かかる資格障害を除去することができる。

 これが規定しているのは政府公職の就任資格なので、予備選挙への出馬資格とは関係がなく、この条文の適用が問題になるのは当選後ではないか、という考え方もあるだろう。問題となっている2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件に関し、トランプは暴動への支持を示唆したとされるが、その程度の関与が条文の想定する事態に当てはまるのかも問題になるかもしれない。そもそも、修正第14条は南北戦争後の南部諸州を想定して作られたものなので、保守派判事の中で有力になっている原意主義的解釈(立法者の意思を最優先する解釈)に基づけば、そもそも状況が違い過ぎるということになる可能性も出てくる。

 また、予備選挙とは本選挙で党の候補として投票用紙に印刷される候補者を決めるために各党が実施するもの、という解釈に立つならば、政党という自発的結社の決定に、裁判所という公的機関がどこまで踏み込んでよいのかも問題になるとも言える。ある有名な政治学者は、政党とは半分公的機関で半分私的機関だと記しているが、その公私の区分けが問題になる可能性もあるだろう。本件についてはさまざまな論点が含まれており、連邦最高裁判所がどのような判決を下すかに注目が集まっている。

 ちなみに、読者の中には、「大統領選挙という全米で行われる選挙の候補者を決めるのに、なぜ州が踏み込んだ判断をしているのか?」という疑問を持つ人もいるかもしれない。

 大統領選挙の各党の候補は、夏に行われる各党の全国党大会で最終的に決まるのだが、その際には、それまでに州ごとに行われる予備選挙と党員集会の結果に基づいて決定が行われる。そして、各州で予備選挙を採用するか党員集会を採用するかは、基本的に各州の政党が決めることになっている。

 したがって、どこかの州で予備選挙の候補者名簿にトランプの名前が載らないことになった場合、同州の共和党が候補者決定方式を党員集会に切り替えてしまえば、トランプを選出することも可能になる。今回の騒ぎを理解するためには、このような候補者決定方式の違いを踏まえる必要があるといえるだろう。

 各党の候補者を決める予備選挙と党員集会は、1月15日のアイオワ州の共和党の党員集会を皮切りに開始される。今回の記事では、米国の大統領選挙の仕組みと連邦制の関係について解説することにしたい。


新着記事

»もっと見る